「安さ競争」から「価値競争」へ。KDDI、既存ユーザーへの値上げと料金に応じた通信品質の差別化を導入
もう1つの注目点は「au Starlink Direct」の展開拡大だ。これまでauユーザー限定だった衛星通信サービスを、UQモバイル・povo・他社ユーザーにも開放する。「専用SIM/eSIM」として提供され、デュアルSIM対応機種なら普段使いの回線と併用可能だ。料金は月額1650円(UQモバイルの「トクトクプラン2」「コミコミプランバリュー」は月額550円)で、6月末までの加入なら6カ月間無料という攻めの姿勢も見せている。

専用SIMにはauの4G LTEエリアで使える1GBのデータ通信も付属する。5月7日からはau Online Shopで、9日からはau取扱店での申し込みに対応。対応機種はGoogle Pixel 9シリーズ、iPhone 16/15/14シリーズなど計18機種で、au以外の販売店で購入した端末も利用できる。

この戦略の妙は、「2枚目SIM」という形で他キャリアユーザーも取り込む点だ。SpaceXのStarlink衛星を活用した直接通信は、他の衛星プロバイダーが少なくとも1年は追いつけないとされる先行技術。この優位性を活かし、メインの契約はそのままに「山間部や近海でつながる追加SIM」として販売することで、新たな市場を開拓する。災害時や緊急時の安全確保という社会的意義を果たしながら、au以外のユーザーも取り込む巧みな商売だ。
見えてきた「価格競争」の終幕
大容量プランの値上げとサービス束ね売りは、端末割引規制やポイント還元競争では埋められない収益ギャップを補う打ち手であり、ドコモとauが明示的に踏み込んだことでソフトバンクが追随するのは時間の問題だ。2010年代を席巻した「実質0円」や「1円スマホ」と同様、"安さ"が競争軸になった時代は終わり、次の主戦場は"つながりの質と体験"に移る。
通信業界では、各社が「値下げ競争」から「価値向上競争」へと戦略をシフトする動きが鮮明になっている。KDDIの決断がソフトバンクなど他社にどのような影響を与えるのか。値上げの対価として何を提供するのかが問われることになりそうだ。
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