自然界の不思議が研究のヒントになる--『光触媒が未来をつくる』を書いた藤嶋昭氏(東京理科大学学長)に聞く

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──関心の高いクリーンエネルギー源、水素の利用は。

世界各国で真剣に開発に取り組まれているが、水素発生効率の改善が進まない。もっと高まればインパクトは大きいが、本当に難しい。

──光触媒のベース物質は変えられない……。

いろいろ工夫しているが、酸化チタンに代わるものは今のところない。酸化チタンには、安くて安全という一大特長がある。値段が安くても毒性があってはどうしようもない。物質探しでブレークスルーがあればいいのだが。

──それだけ、酸化チタンでの光触媒は画期的な発見でしたね。

研究には発想の転換が大事だ。そのセンスを磨くにはどうしたらいいか。つねに身の回りに関心を持って、不思議で終わらせず、それをヒントにして研究に生かすことだ。

私の光触媒の発見も、葉の表面に日が当たると水が分解して酸素が出ることが一つのモデルになった。中国に戻っている元留学生とこのところ議論していて、しばしば面白いことに気づかされる。たとえばクモは巣作りでお尻から糸を出して模様を描く。その横糸はネバネバするが、縦糸はそうではない。しかもそのネバネバは夏に日中乾燥しても、朝露で再生するという。そういう工夫をクモは持っている。

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