自然界の不思議が研究のヒントになる--『光触媒が未来をつくる』を書いた藤嶋昭氏(東京理科大学学長)に聞く
──身近な例では、鏡の曇り止めで有用です。
展望浴場のガラスが曇らなくなる。曇るのは蒸気が小さな水滴になるからであり、水が膜のように覆えば曇らない。酸化チタンでそうすることができる。自動車のサイドミラーなどにも利用されている。
最近目立つのは、ビルの外装防汚への活用。国内では、2002年の東京駅前の丸ビルが最初で、6階までのタイルにコーティングした。油汚れがつかないし、大雨が降ればセルフクリーニング効果で表面がきれいになる。このほか、つくばエクスプレスや田園都市線、東横線ほかで駅舎のテント素料にもコーティングしている。テントといえば、エジプトにある大ピラミッドの横で、吉村作治教授が太陽神の船を見つけたが、その作業場のテントに光触媒が使われているのが話題だ。
──ご自宅にも。
12年前に塗った。今は世界中で使われている。上海万博のときには日本館ばかりでなく、フィンランド館はじめ多数に上った。最近では、欧州でフランスのポンピドーセンター(国立美術文化センター)の分館、同じフランスのルーブル美術館入り口のピラミッド型建物、さらにイタリア、ブルガリア、オランダ、ドイツなどの建物で使われている。また米国ではダラスのアメリカンフットボール競技場の屋根が光触媒付きになるなど盛んだ。
──空気清浄は道路資材にも応用されて……。
欧州にはディーゼル車が多い。排気ガスに含まれる窒素酸化物を酸化して除去するため、セメントの表面に酸化チタンを付ける試みが行われている。光触媒でコーティングした舗装道路も考えられる。