「圧倒的な差を」、味も見た目も段違い、"進化系"ミルクレープの正体。「クリームが主役」でブランドリニューアル、目指すは世界進出

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同社のミルクレープは、クレープが20枚で生地とクリームのハーモニーが感じられる食感と味わいだが、ミルクリームのクレープは8枚。食べるとクレープよりクリームが目立つがそれは、同社が狙ったポイントでもあった。

蟻田剛毅社長は「ミルクレープはクレープが主役なんですが、半分はクリーム。クリームが主役のミルクレープを作ろう、とブランドリニューアルに舵を切りました」と話す。このクリームには、シュゼットグループの社会貢献活動も隠されていた。

北海道の酪農との深いつながり

同社は1969年、芦屋市でケーキをテイクアウトできる喫茶店「アンリ・シャルパンティエ」として開業したのが始まり。全国のデパ地下などで展開する同ブランドの2大看板商品が、フィナンシェとクレープ・シュゼットで、どちらもたっぷりのバターにポイントがある。

創業者の蟻田尚邦前社長は、フランス視察でバターのおいしさに目覚め、高品質なバターを探す中で北海道・釧路地方の浜中町にある工場と出合った。

2代目の蟻田剛毅社長は、「ちょうど工場が販売先を探していたタイミングだったこともあり、手の込んだクリームやバターの製造を引き受けてくれたんです」と話す。

浜中町は夏も最高気温が25度を超えることがほとんどなく、しばしば霧に包まれる冷涼な気候。コメや野菜の栽培には向かないが、酪農には最適な気候となっている。しかし、他の産地と同じく、浜中町の酪農も長年、人手不足に苦しんできた。

シュゼットグループは同工場と関わるうちに、JA浜中町が新規就農者の募集や育成を行うなど、未経験者を含めて酪農者を増やす取り組みをしてきたことを知る。

梅田の常設店舗
「カサネオ」は大阪の阪急うめだ本店に常設店舗を構えている(写真:シュゼット提供)

もともと、阪神淡路大震災で大きな被害を受けたシュゼットは、2012年から東日本大震災の被災地支援を行うなど社会貢献事業にも力を入れてきた。そこで、浜中町の酪農支援プロジェクトも2016年に開始する。

「まず、2016年に新規就農者4人にメスの子牛を1頭ずつ贈呈し、その後もJA浜中町様を通じて、浜中町研修牧場の新規就農者が必要とする機材などを贈呈してきました。浜中町は、研修牧場の活動により、九州・四国・本州からのリクルート活動を行った結果、北海道全体の酪農人口が33年間で3分の1ほどまで減る中、浜中町は6割強までに抑えられています」と説明する。

一般社団法人中央酪農会議によると、指定団体で受託している酪農家戸数は2019年4月に1万3384戸あったが、生産コストの上昇なども受け2024年10月、初めて1万戸を割っている。

また、農水省畜産局が2024年に発表した「畜産への新規就農及び経営離脱に関する調査」によると、全国の新規就農及びUターン就農の酪農者は2018年に99人で、そのうち北海道は64人いたが、2022年は全国で56人、北海道は35人で、こちらも減少している。

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