「圧倒的な差を」、味も見た目も段違い、"進化系"ミルクレープの正体。「クリームが主役」でブランドリニューアル、目指すは世界進出

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継続する支援と直接取り引きのおかげで、シュゼットグループでは「バター不足の折も、欠品したことがありません。乳製品の購入価格も上がっていますが、当社は他社さんほどではないと思います。デパ地下で比べていただいたらわかると思いますが、当社の商品は割安です。ブランド価値を上げる意味では良し悪しなんですが」と蟻田社長は言う。

【写真】クリームが主役!断面が美しい進化系ミルクレープやお店の様子など(10枚)

日本発祥のミルクレープで世界進出を

ミルクレープ単品で勝負するブランドを立ち上げた理由は、「ミルクレープはドトールコーヒーショップのショーケースにもたくさん並んでいて、同社の関係者に聞いても、売り上げに占める割合がとても高い。国民食レベルになっている」から。

関根氏に出会った際、「(自分は)ミルクレープの元祖で"父親"(とも言える存在)なんです」「ドトールのミルクレープも、基本のレシピを作ったのは僕」と話すのを聞いて蟻田社長は、関根氏の技術と自社が持つクレープ製造技術を合わせれば勝負できる、と決断したという。

そもそも同社は、クレープ・シュゼットが始まりだった。14年前に他界した創業者の蟻田尚邦氏は、上場企業経営者の父のもとで育つ。しかし、大学も中退し就職も失敗。

「父親の口利きで大阪・中之島のレストランで働いていたとき、クレープにアルコールをかけフランベするクレープ・シュゼットの演出を見て、自分もクレープ・シュゼットを出す喫茶店をやろうと考えたんです」「父親に認められたい、と意地があったんでしょうね。100億円規模の会社にして、日本中に知られるケーキ屋とレストランをやりたい、と書いた作文が死後出てきたんです」と言う蟻田社長は、「カサネオ」で世界進出を考えている。

荻窪の期間限定ショップ
4月にルミネ荻窪・みどりの窓口跡催事に開設された期間限定ショップ(現在は終了)は、常設店と勘違いするほどだった(写真:尾形文繁撮影)

関東での催事が「最初は1週間ぐらい出すご提案を、ポッといただく程度でしたが、だんだん評判になって今は正月以外、必ずどこかでやっています」という好調さもあり、「何とか1年以内に、山手線エリアに2店ぐらい出したい」と蟻田社長は言う。

乳製品の歴史が浅い日本生まれのミルクレープが、世界に羽ばたく日は果たして来るのか。

農水省の調査によれば、チーズの年間1人当たりの消費量は2008年以降増加傾向にあり、生クリームやバターの消費量も安定している。クリームたっぷりはミルクレープだけでなく、ショートケーキやロールケーキでも目立つ。

バターを使う焼き菓子も近年流行しており、生クリームや牛乳を使うプリン、エッグタルトも人気だ。私たちの生活には、もはや乳製品が欠かせない。そんな乳製品をたっぷり使ったミルクレープの運命は、酪農業の行方にも左右される。おいしいスイーツの後ろにある生産現場の動向にも、注目していきたい。

→【合わせて読む】実は「日本発祥スイーツ」のミルクレープが人気上昇中、"生みの親"が語る専門店誕生の舞台裏

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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