中野:ちょっとだけ擁護すると、GDPを600兆円にするという目標を立てたのは正しいと思います。名目で3%成長を20年続ければ、GDPは倍になります。このくらいのスパンで見て、持続的安定成長を続けるための改革や仕組みづくりを行い、20年でGDPが1000兆円になるくらいのビジョンを掲げたらよいと思います。
藤野:平均3%成長が続くと、6年間でGDPは600兆円になる。ただ、過去20年間で名目GDP成長率が3%に達したことがないのに、それを今後6年間も続けるのは夢の話。しかも、その頃には安倍首相は首相ではなくなっています。600兆円なんて、誰もコミットしていない数字なんですよね
中野:具体体策を示さないのはダメですね。
GDPの目標数値を出すこと自体が時代遅れ
渋澤 :GDPで目標値を示すこと自体が、もはや時代遅れという印象を受けます。GDPって「国内総生産」だから、日本国内で生み出された富の総額ですよね。でも、本当に国民の富を計りたいのであれば、海外からの所得の純受取なども合算したGNI(国民総所得)を用いた方が、より現実的な数字になります。
また、総額ベースではなく、国民1人あたりのGNIを世界一にするという目標を掲げたほうがわかりやすい。そして、海外からの所得を高めるためには、利息の付かない円現金を手元に置いておくよりも、海外の資産へ積極的に投資する必要があります。より豊かな生活にもつながるマインドセットになるのではないでしょうか。
中野 :同感ですね。アベノミクスがスタートした時に掲げた旧3本の矢では、金融制度改革が大きな部分を成していました。その目的は、2020年までに日本を金融立国にすることでしたが、成熟国では正しい選択肢のひとつです。国内に滞留した現金を有効活用し、海外に働きに出すことによって利益が得られれば、日本のGNIが上昇します。それが最終的にGDPの増加にもつながっていく。
工業製品を製造してGDPを押し上げるのは、経済成長の第1段階。先進各国は、もはやそのスタイルでは経済が立ち行かなくなることを理解しています。ですから、国民一人ひとりのクオリティ・オブ・ライフを高めるためにも、知的集約型産業を立ち上げ、これまでとは違う形での経済成長を目指す必要があります。
でも、新3本の矢には、この手の戦略がまったく見えてきません。「1億総活躍社会」なんて言われても、漠然とし過ぎていてよくわからない。
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