藤野:大体において言葉のセンスが古い。「1億総○○」って言葉から連想するのは、直近だと1960年から92年くらいまでの「1億総中流」とか「1億総白痴」、戦中・戦後の「1億総懺悔」などがありますが、今どきそんな言葉あまり使わないでしょう。その時点でセンスが古い。
あと「総活躍」ですが、躍の字を外して、活を括に帰れば、「総括」という文字が出来上がります。総括ですよ、総括。この言葉は、連合赤軍が仲間をリンチする際に用いた言葉ですからね。まあ、そこまで考えてはいないだろうと思ますが、仮にそこまで考えて「1億総活躍社会」という言葉をひねり出したとしたら、残念な話だと思います。
中野:戦時中の大本営スローガンも想起させますね。
藤野:まあ、少なくともワクワクさせられるものではありませんね。
渋澤:安倍首相はかなり焦りもあるのではないでしょうか。安保法案に関してはゴタゴタが続き、ようやく可決した時点で誰の目も経済に向くのは自明だったわけですよね。だから、とにかく何か出さなければならない。そうしないと、低下した支持率を回復できず、来年の参院選で負ける恐れがある。拙速でも何でもよいから、経済政策を打ち出さざるを得なかったというのが、本音だと思います。
策を練る時間は十分にあったはず
藤野:でも安保法案が通れば、次に経済を何とかしなければならないというのは、大分前からわかっていたことじゃないですか。財務省でも経産省でも、あるいは厚労省でも、それは分かっていたのだから、策を練る時間は十分にあったはずです。
新アベノミクスでも新3本の矢でもいいから、きちっと日本の将来を見据えた内容にして欲しかった。どう見ても、安保法案が終わってから急に、安倍首相の周りの人たちだけで作ったとしか思えません。
中野:古い自民党の発想から抜け出られないのですね。「夢をつむぐ子育て支援」で子供を増やす必要があるとして、そのための支援策が保育所の増設でしょう。もちろん、保育所を増やすことも大事ですよ。待機児童があまりにも多くて、共働きが出来ない。だから子供を作るのはあきらめようという夫婦だっているはずですからね。
でも、保育所を増やすという発想自体、すでに旧態依然とした自民党の発想ですよ。バブルが崩壊した後、さまざまなところでバッシングされた箱モノ行政そのものですからね。そうじゃなくて、もっとソフトの面から、景気をサポートできる方法を考える必要があると思います。
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