トランプ政権の大学攻撃の本質と大学の矜持(下)受けて立つハーバード大学を支えるのは大学基金7兆円超の運用益

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ハーバード大学がトランプ政権の要求を拒否したことについて、イエール大学とスタンフォード大学は支持を表明した。レビン・スタンフォード大学学長は「ハーバード大学の異議はアメリカの自由の伝統に根ざしており、大学にとって基本的な伝統であり、守る価値がある」と語っている。イエール大学は「私たちは岐路に立っている。アメリカの大学は民主社会の基盤である原則を脅かす異例な攻撃に直面している」と危機感を表明している。

トランプ政権の圧力に屈したコロンビア大学とーバード大学の決定的な違いは資金力だ。22億ドルの助成金が凍結されたというニュースが流れると、その後、24時間でオンラインを通して約4000件の寄付があり、総額は1億1400万ドルを超えた。ただ、寄付だけで政府助成金の減少を埋め合わせることはできない。

ハーバード大学の抵抗を支える財務基盤

2024年6月に発表された2024年度の経営状況を見てみよう。営業収入は65億ドル、営業利益は4500万ドルであった。収入の内訳は、寄付や大学基金の運用益が45%、授業料などが21%、政府や非政府からの研究収入が16%、その他が18%となっている。最大の収入源は大学基金の運用益だ。基金を運用するハーバード・マネジメント・カンパニーの2024年度の運用利回りは9.6%で、24億ドルが大学の収入となり、25億ドルが基金に積まれて基金の総額は532億ドル(1ドル=140円換算で7兆4480億円)になっている。もちろん、助成金や契約の減少は経営に大きな影響を及ぼすが、それでもハーバード大学がトランプ政権に抵抗できるのは、こうした堅固な財務基盤があるためである。

トランプ政権とエリート大学の対立は法廷に持ち込まれ、簡単には解決しそうにない。ただ、第1次トランプ政権では、最初に過激な政策を打ち上げても、裁判所で差し止め命令が出るなどして、尻切れで終わっている政策が多い。状況が変われば、簡単に政策を変えるのがトランプ大統領である。裁判所の判断がカギとなる可能性が高い。

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』(中公新書)。

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