トランプ政権の大学攻撃の本質と大学の矜持(下)受けて立つハーバード大学を支えるのは大学基金7兆円超の運用益
そして、2025年3月31日、教育省、保健福祉省、一般調達庁が連名で、「ハーバード大学に対する助成金と契約の見直しを始める」と発表した。その理由として、マクマホン教育長官は「ハーバードは反ユダヤ差別から学生を守ることができなかった。その一方で自由な探求よりも分裂的なイデオロギーを促進してきた」と説明している。そして「大学と大学に属する研究所や病院などが政府のコンプライアンスに違反していることがわかれば、契約の解除を含む行政措置が取られるかもしれない」としている。対象額は前述のとおり90億ドルだ(契約分2億5560万ドルと助成金87億ドル)。
この発表を受け、ハーバード大学のガーバー学長は「私たちの決意」と題する声明を出し、「この資金が停止されると、命を救う研究が中断し、重要な科学的研究と革新が危機にさらされる」と、その重大性を指摘。さらに「私たちは最も陰湿な偏見のひとつである反ユダヤ主義と戦うという重要な目標を完全に受け入れる」と、政府と協力する姿勢を示した。
対話を拒否し、要求を突き付ける政権
4月3日、3者連名の書簡がハーバード大学に届いた。大学の声明に対して「ハーバード大学は反ユダヤ主義と戦うタスクフォースと対話を求めている」としながら、「ハーバード大学は反ユダヤ主義的暴力やハラスメントから学生と職員を守ることができなかったことに加え、公民権法に違反している恐れがある」と、すでに結論が出ている姿勢を示した。実質的な対話拒否である。そして、「反ユダヤ主義を助長しているプログラムや学部を見直し、偏見に取り組み、多様性に関する見解を改善し、偏ったイデオロギーを終わらせること」「DEIプログラムは分裂と憎悪を助長するため廃止する努力を行うこと」など大学が順守すべき9項目を列挙している。
この書簡に対してハーバード大学は特に反応を示さなかったが、4月11日に3者連名の5ページにわたる書簡がハーバード大学に届いた。そこには、「ハーバード大学は最近、知的環境でも、公民権の状況でも、基準を満たしていない」と決めつけ、「連邦政府と大学の財政的な関係を維持するには私たちが示した条件に関して原則的に合意する必要がある」と、改めて条件を提示している。内容は基本的に4月3日の書簡に書かれているものだが、「入試と採用に際して意見の多様性を重視(保守的な意見の候補者の採用)」「告発者の保護」「組織の透明性と監視」など、さらに詳細かつコロンビア大学に対する条件よりも厳しくなっている。
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