トランプ政権の大学攻撃の本質と大学の矜持(下)受けて立つハーバード大学を支えるのは大学基金7兆円超の運用益
これをのめば政府の監督下に置かれるのに等しい。当然、ハーバード大学は反発し、4月14日に大学の顧問弁護士が書簡を政府3機関に送った。「過去15カ月、さまざまな対策を実施し、改革を行い、その結果、ハーバード大学は1年前とは大きく変わった。しかし不幸にも、政府の書簡は大学の努力を無視し、要求を突き付けている。これは憲法修正第1条が規定する表現の自由の原則に反するものであり、最高裁が認めた大学の自由を侵すものである」と反論した。
さらに「大学は独立性を放棄することも、憲法上の権利を放棄することもない。ハーバード大学も他の私立大学も連邦政府に乗っ取られることを認めることはない。ハーバード大学は政府の法的な権限を越える要求を受け入れることはない」と、要求を真っ向から拒絶した。ガーバー学長も「どんな政府も私立大学が何を教えるか、誰を受け入れ、誰を採用するか、どの研究分野を追求すべきか指示すべきではない」という声明を発表した。
政権の執拗な攻撃を受けて立ち、全面戦争へ
これを受け、4月14日、タスクフォースは90億ドルの一部、助成金22億ドルと6000万ドルの契約の凍結を発表した(額は単年度ではなく、複数年度の合計)。さらに教育省は外国人留学生の違法な行為に関する詳細な記録を4月30日までに提出するように要求、応じなければ、学生の交換訪問プログラムの認定を解除すると発表した。そこまでやるかと言うほど、徹底した攻撃である。大学新聞『Harvard Gazette』は、ガーバー学長の言葉として、「政府はさらに10億ドルの資金凍結を検討している」と伝えている。
さらに4月15日の午前11時にトランプ大統領も自分のSNS『Truth Social』で「ハーバード大学が政治的、イデオロギー的、またはテロリストに触発された病的行為を促進し続けるなら、税免除の地位を失い、政治的団体として課税されるべきだ」と投稿した。要求を飲まなければ、学校法人としての免税措置も取り上げるというのである。ただ、政府に教育機関に対する免税措置を廃止する権限があるかどうか疑問であり、この発信はトランプ大統領特有のハッタリとみるべきだろう。
4月21日、ガーバー学長は「私たちの価値を、大学を守る」と題する声明を発表し、「少し前、資金凍結は違法で、政府の権限を越えたものであることから、資金凍結の差し止めをボストン連邦地方裁判所に提訴した」と明かした。政権との全面戦争である。学長は「私たちは法に基づく義務を完全に順守している。訴訟は法的な責任であり、道徳的な義務でもある」と、その正当性を主張した。差し止めを認める判決が出る可能性は十分にあり、状況はまだ流動的である。
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