「狂うしかない」シーズン2の勢い
前作がヒットしたことで制作予算が増えて続編が派手な演出に変わるのは“ドラマあるある”です。「ガンニバル」もシーズン2では銃撃戦の規模とバイオレンス描写の過激さが増していましたが、他作品とは異なりその背景には緻密な狙いがありそうです。
前提として、構成の違いがあります。シーズン1はあくまでも主人公の大悟(柳楽)の視点で供花村の秘密を追っていく展開ですが、それに対してシーズン2は供花村で同時多発的に起こる出来事を中心に物語が進んでいきます。大悟の視点に限定しないため、スケールをより大きく感じさせます。
山本晃久プロデューサー曰く、真相をひとつひとつ確かめるフェーズは終わり、「もはやパンドラの箱が開いてしまったのがシーズン2」です。だから、オープニングから「ギアが入った」演出が打ち出されているのだそうです。
「そっちが狂ってるなら、こっちも狂うしかねぇんだよ」という大悟のこのせりふはタガが外れたような激しさを象徴しています。それはまるで、大悟が威勢よく「ボケカスが」と吐き捨てるお馴染みのせりふでは足りないと言わんばかり。シーズン2では、そんな大悟の怒りの矛先である後藤家にも焦点が当たります。村を支配する非道な後藤家ひとりひとりの顔が見えてくる部分も面白さに拍車を掛けます。

売れっ子俳優の笠松将が演じる後藤家の新当主・後藤恵介は、一族を守りたい気持ちと芽生えた疑念との間で揺れ動き、より人間味のある姿を見せます。恵介の弟・洋介の葛藤も若手ホープの杉田雷麟がこれまた好演しています。吉原光夫が扮する後藤家の主力構成員・岩男も存在感が増しています。マルチタレントの澤井一希が特殊メイクで挑んだ“あの人”と呼ばれる正体不明の大男でさえ、感情移入できる場面が用意されています。
ただ単に狂っていたようにしか映らなかった後藤家の面々を、キャラクターとして浮き上がらせた作りは見事なもの。話数を余計に増やしてもう少し掘り下げてもよかったのではないかと思ってしまうほどです。

無料会員登録はこちら
ログインはこちら