藤木・経済産業事務次官に聞く「産業・エネルギー政策」の舵取り。トランプ関税への対応、アラスカLNG開発への関与は

──事務次官就任に際しての抱負を。
日本経済は長年にわたる低迷を脱し、明るい兆しが見えてきた。設備投資や研究開発投資、さらには人材投資など、前向きな成長投資が現実になってきている。日本労働組合総連合会(連合)によれば、賃上げ率は2年続けて5%超となった。実質賃金はマイナス状態が続いてきたが、7月には久しぶりにプラスになった。経済が活性化しつつあるこの機をとらえ、日本経済をもう一度成長軌道に乗せたい。GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)、経済安全保障などをいかに具体的な形にし、成長投資を実現させていくかが、経済産業省のミッションだ。
もう1つのミッションとして、日本の人材育成がある。成長投資を進める中で、それに必要な人材をいかに生み出し、確保していくか。投資だけでなく、人材育成の面についてもしっかり考えていかなければならない。その点では文部科学省や厚生労働省など関係省庁ともしっかり連携しながら進めていきたい。
経産省を働きがいのある、働きやすい職場にしていくことも、私の重要な仕事だ。この2年ほど、組織経営改革の名の下にさまざまな取り組みをしてきた。それをもう一段、二段進めて、もっとよい職場環境を作り、強い組織にしていきたい。
不透明さ増す国際情勢、官民の連携強化
──戦争や、関税をはじめとしたブロック経済化など、地政学的なリスクが増大しています。気候変動問題も深刻化しています。そうした中で、どのように経済産業、通商、エネルギー政策の舵取りをしていきますか。
いろいろな面で不確実性が増してきている。10年前に当たり前だと思っていたことが、そうではなくなっている。世界の異なる価値観の人々とどうやって一緒に仕事をしていくか、あるいはどのようにビジネスをしていくかといったテーマに取り組んでいかなければならない。エネルギーに関しても安全保障の要素が強くなってきている。
地球環境問題も、一段と厳しさを増している。そうした中で取り組みがうまくいかなかったり、アメリカのトランプ政権のように政策の向きが変わったりといったことも起きている。しかし、カーボンニュートラルへの取り組みは必要不可欠であり、短期的な変動を乗り越えていかなければならない。ここでは官民連携が非常に重要になる。政府としてはリスクをどうシェアするか、また、制度をどう構築していくかが課題となる。官民できめ細かく連携していかなければならない。
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