<ライフスタイルの変化が年金の未来を明るくする>「モデル年金」ベースの議論はもうやめよう。本当の将来像を知れば、改革案は絞られる 

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第1号被保険者の人は、基礎年金の被保険者期間が40年から45年になると、その間の保険料の拠出は増える。ゆえに、それまでの基礎年金と同じように、給付額の2分の1の国庫負担が含まれた基礎年金を5年分余計に受給することができるようになる。もちろん、保険料を拠出することが経済的に困難な場合は、60歳未満と同じように免除制度を利用することができる。

被保険者期間の延長による基礎年金の底上げを急げ

基礎年金の被保険者期間が40年と定められたのは60年以上前の話である。2017年には日本老年学会・日本老年医学会は高齢者再定義の報告書の中で、日本人は若返った、だから65歳からを高齢者と呼ぶのではなく75歳にしましょうと提言していた。

この提言を受けて2024年にまとめられた高齢社会対策大綱では、「我が国の平均寿命は世界で最も高い水準となり、高齢者の体力的な若返りも指摘されている。また、65歳以上の就業者等は増加し続けており、その意欲も高い状況にある。

このような状況を踏まえれば、65歳以上を一律に捉えることは現実的ではない」とも記されるようになっている。
さすがにそろそろ基礎年金の被保険者期間を40年から45年にするのが自然であろう――多くの人たちがそう思っていた。そのための改革のイメージが次で示されている。

今の制度は、20歳から59歳まで保険料を拠出して、60歳から5年間の待機の後に65歳から支給される不自然な制度である(もちろん60歳から受給できる繰り上げ制度はある)。

将来、被保険者期間の5年間延長が行われれば、拠出期間が延びた分にあわせて基礎年金の満額が国庫負担付きで引き上がる。基礎年金の水準底上げとしては、極めて有効かつ自然な政策であると評価されてきた理由である。

あまり知られていないことであるが、厚生年金の加入者には追加の保険料拠出はなく、保険料率は18.3%のままであるのだが、基礎年金額は増える。

基礎年金の被保険者期間を45年にすると、被保険者期間が延長された5年分の給付に要する基礎年金への国庫負担分の財源が必要になる。そうした財源についてもしっかりと議論を行おうということが、長く言われてきたことであった。

基礎年金の給付水準の引き上げ自体が目的ではないが、その効果も大きい「適用拡大、勤労者皆保険と基礎年金被保険者期間45年化」は、年金改革の王道である。これらの改革は、日本の公的年金を本来あるべき姿に戻すためのものだからである。そしてこの王道の改革を速やかに行うことこそが、その副次的効果としての低年金対策としても最も効果があるとも言われてきたのが、長く公的年金の世界での主な議論であった。

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