雇用延長時こそ、厳選採用で「60歳就活」へ環境整備を

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二つ目の道は転職・起業だ。大企業で培った技術を求める中小企業は少なくない。高齢者専門の人材派遣会社「マイスター60」は「60歳入社、70歳選択定年」という新たな雇用市場を作りつつある。高齢者の雇用市場活性化へ向け政府の果たす役割は大きい。

一方、生きがい重視の就活もある。経済的にゆとりがあれば、NPO法人で地域社会貢献など、経験や潜在力を生かした働き方が考えられる。

もちろん、健康問題などで就業が難しい場合には国による支援が不可欠だ。年金の繰り上げ支給などの制度もまだまだ改善の余地がある。

民間出身で公立中学の校長になった藤原和博氏(大阪府知事特別顧問)は、「これからの人生、坂の上には雲はなく、定年以降の『坂の上の坂』へ向けて、55歳までに自ら身の処し方を準備しておかなくてはならない」と近著で述べている。たまたま高度成長期に入社した会社で70歳近くまでお世話になることに違和感を抱いてほしい。

「60歳からの就活」はそれまでの社会人としての実績を評価されるものだ。60歳といえば就職を控えた子を持つ人も多かろう。自分たちは全員採用で、採用へ向け今まさに悪戦苦闘している就活生である子が「厳選採用」ではあまりにも理不尽だ。

顧みれば、「これまでの厚い雇用保障や年功賃金など日本型雇用システムの変革が求められる」(堀江氏)時期に差しかかってきた。これに対し、高齢者の希望者全員雇用延長はその根本的な課題の先送りにすぎない。高齢化社会を迎え、われわれはもう一度坂を上り始めなければならない。そのためにも「60歳からの就活」市場の創設・拡充を求めたい。

(シニアライター:野津 滋 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年3月3日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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