斜面を上って、下って、また上って…。平均年齢55歳が支える長崎・佐世保の「人力ごみ収集」、知られざる「引き出し作業」体験ルポ

✎ 1〜 ✎ 31 ✎ 32 ✎ 33 ✎ 34
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

皆さんの歩くスピードは速く、小走りしないと追いつけない。坂道なのですぐに息が切れ、ステーションに着いても瞬時に収集する動作へと移れなかった。

坂道を登る
細い坂を上っていく(写真:筆者撮影)

「ごみステーション」に着くと排出されたごみの量を見て、箱や枠を使うかを決める。箱を使うときは2/3ぐらいまでは小さな袋のごみを横向きにして詰めていく。その後はごみを立てて入れる。これにより多くのごみが積めるようになる。

収集が終わると次のステーションに向けて箱を引っ張っていく。急な下りは腰に箱を当ててスピードをコントロールして引いていく。

小さなごみを横向けに詰めていく
小さなごみは横向けき詰めていく。下り坂は腰に箱を当てて、スピードをコントロールする。箱の下部がかかとに当たらないよう、「足は前、体は後ろ」の体制で重力を利用し、ロープで舵を切りながら滑り降ろしていく(写真:筆者撮影)

次のステーションまでは下りばかりではなく、一部は上りもある。箱にごみが詰まってくると、引き上げるのはかなりの力が必要となる。

階段からの引き出し収集と"地獄"の箱戻し作業

一方、路地の中には階段もある。階段での引き出し収集には独特の技術が必要となる。箱の前側を浮かせながら、後ろ側だけを階段につけて滑り降ろしていくのだ。

階段を下ろしていく
箱のつなを少し持ち上げ、方向をコントロールしながら重力を利用して滑り降ろしていく。勢いのついた箱に、かかとが枠に巻き込まれないようにするために、小走りに近いスピードで降りていかざるを得ない(写真:筆者撮影)

ごみの詰まった箱は重く、階段を踏み外して転倒するのではないかと思った。捻挫は覚悟していたが、コツを伝授していただいたおかげで、けがなく作業が終えられた。素人が簡単にできる作業ではないと痛感した。雨や雪で路面が濡れている時の作業環境はかなり厳しくなるだろう。

引き出し収集の後は、箱と枠板を元の場所に戻す作業を行う。箱と枠板を肩に担ぎあげ、坂道や階段を上っていくのだ。ただでさえ大変な上り道を、20kg程の器材を担いでいくのはかなりの重労働である。

箱をかつぐ様子
箱を担ぎあげ、元の場所へ運んでいくのは大変な重労働だ(写真:筆者撮影)
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事