斜面を上って、下って、また上って…。平均年齢55歳が支える長崎・佐世保の「人力ごみ収集」、知られざる「引き出し作業」体験ルポ

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引き出し収集には、運搬時の道具となる「箱」や9mmのベニヤ板である「枠板」が利用される。箱単体で利用する時もあれば、ごみ量が多い時には箱の中に枠板を立て、収集量を多くする。

枠板を立てた例
ごみが多い時は箱の中に枠板を立て、“2階建て”にして収集量を増やす(写真:筆者撮影)

箱は収集する現場によって使い分けられ、①階段での滑り落とし用の「スラセ」、②平地での滑走のために車輪が装着されている「鉄ベアリング」、③「ゴムベアリング」の3種類が存在。ごみステーション横に設置され、「置き箱」と呼ばれている。

階段での滑り落とし用の「スラセ」(
階段で滑り落とし用に使う「スラセ」は箱の下に板とプラスチックボードが装着されている(写真:筆者撮影)
鉄ベアリング
平地での滑走のために車輪が装着されている「鉄ベアリング」タイプ(写真:筆者撮影)

引き出し地区に設置されている「置き箱」の総数は297。置き箱は佐世保市側で用意し、清掃事業の拠点となる環境センター内の作業所で定期的にメンテナンスしている。

箱と枠板を軽々と担ぐ小川氏
箱と枠板を軽々と担ぐ小川氏(写真:筆者撮影)

引き出し収集の現場に向かう前に、箱と枠板の持ち方のレクチャーを受けた。引き出し収集で利用した箱と枠板は元の場所に戻す必要があり、それらを担いで坂道や階段を上っていくためである。

スラセタイプの箱は15kg、それに枠板を入れると合計約20kgとなる。ベアリングタイプの箱ならさらに重くなる。これらを平均年齢54歳の方々が持ち上げて、坂道を約100mか階段を約100段上っていく。

小川氏が実演し、枠が落ちないように手を添えて箱を肩に担ぐコツを教えていただいた。その軽々とした動作からは重さは感じられなかったが、実際に担いでみるとかなり重く、肩にずしっときた。これを担いで坂道や階段を上るのを想像するとぞっとした。

坂道の収集をどのように行っているのか?

清掃車では珍しいダブルキャビン車に乗り、小雨が降る中、10分程度で作業現場へと到着した。2組に分かれて細い路地を上り奥の方へと進んでいった。

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