村上春樹の名作をオリジナルに改変?《NHKを辞めた監督》が、ドラマ『地震のあとで』を“再びNHKで”撮った理由

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第1話は阪神・淡路大震災が起きたあとの東京が舞台で、主人公・小村(岡田将生)は1995年1月18日、通勤に地下鉄秋葉原駅を使っている。やがて起きる地下鉄サリン事件を思わせる描写である(原作でも彼が勤務しているオーディオ専門店は秋葉原という記述がある)。

第4話「続・かえるくん〜」は、新宿歌舞伎町の地底で起きるミミズくんの大暴れを阻止するべく、かえるくんと片桐(佐藤浩市)が奮闘する話になる。

「地震の話とはつまり地下の話です。地下鉄は人間の潜在意識に入り込むための装置として考え、そのため何度も登場させました。第4話のミミズくんの外観や体内にも見えたらいいなと考えました」

地下鉄のホームやトンネルは、神戸や千葉県成田の現在は使われていない場所でロケをした。電車は実物のほか、ジオラマ模型を作って撮影した。

「ジオラマは、若手作家の入交優さんに精密で大胆なものを作成してもらって撮りました。それによってカメラが入れないアングルも映すことができているんです。

これはリアリティの再現のためだけではなく、ジオラマというリアルではない不自然さによって、登場人物たちがいる場が不思議な世界として見えるのではないかと考えました。なんだか少し不思議なことが始まっているのではないか、とテレビを観ている人に感じてもらいたかったんです。

電車に乗っている小村が揺れていたり、歩く廊下も少し曲がっていたりするのは時空が歪んで異界に入っていくようなイメージです」

印象的な「ゆれる」シーン

全話においてモチーフにしたのは、「ゆれる」というキーワード。第1話で同僚の佐々木(泉澤祐希)が小村に箱を託すとき、手にしたライトがかすかにゆれて画面に陰影がつく。撮影の渡辺寿岳のアイデアだ。

第2話の海岸でゆれる焚き火は最たるものだった。

第2話のラスト、2011年、日付が3月10日から11日に変わる深夜、それぞれに孤独を抱える順子(鳴海唯)と三宅(堤真一)のシーン。

「三宅が『死に方考えるわ』と言うときに焚き火がものすごく点滅しているんです。2人の顔が暗くなったり最後ふっとまた明るくなったり、火の表情が変わるんです」

地震のあとで
焚き火のシーンが印象的だった第2話(©️NHK)
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