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村上春樹の名作をオリジナルに改変?《NHKを辞めた監督》が、ドラマ『地震のあとで』を“再びNHKで”撮った理由

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芝居は徹底してナチュラルに、炎のゆらぎで登場人物の心情や状況を感じさせる演出である。火のコントロールは、焚き火師監修の指導のもと助監督、美術も奮闘に依頼した。

「焚き火監修の寒川一さんが焚き火に魅入られたきっかけが、なんと『アイロンのある風景』だったそうなんです。そして勤めていた会社を辞めて、アウトドアライフアドバイザーとして焚き火の達人を目指されたそうです」

4月19日(土)放送の第3話では、宗教2世の善也(渡辺大知)の踊り方が「かえる」に似ていると劇中で言われるのだが、ふだんから彼の動きを意識的に少し奇妙なものにした。

「たとえば、ベッドから起き上がるときのタイミングや体のひねり方に変化をつけました。善也はすぐに物事に反応する人ではなくて、ほんのちょっと時間が必要なんです。演じている渡辺さんとしては、クライマックスで急に変な動きをするのではなく、その前からストロークを作っておきたいと言うので、話し合いながら彼独自の動きを取り入れていきました」

第3話で特徴的な動きにこだわり好演した渡辺大知(©️NHK)

野球場でダンスするシーンでは、音楽の大友良英がその場で即興演奏をした。

「巧いダンスを見せることが目的ではなく、善也の感情の発露なので、大友さんをわざわざロケ地である富士山のそばまで呼んで、大音響でギターを鳴らしてもらいました。まだ劇伴も作る前で、ただ感じた音を鳴らし、渡辺さんには感じたように動いてもらいながら、即興と偶発的なクリエーションを数時間撮影しました。この曲は第3話のみならず、ほかの回でも使用していますし、このときの演奏のエモーショナルな感覚が劇伴全体に反映されていると思います」

『その街のこども』から何作もタッグを組んできた大友と井上の信頼関係あっての表現だろう。

その第3話に出てくる駅は地下鉄の霞ケ関だ。

第1話から仕掛けられた「記号」のリンク

第4話ではミミズくんがあやしくゆらゆら揺らぎ蠢いている。また、ゆらぎとは関係ないかもしれないが、1995年の闘いから30年経って年老いたはずの片桐(佐藤浩市)が時々、少年のような顔になるのが印象的だ。

かえるくんと奮闘する片桐を佐藤浩市がコミカルに演じた(©️NHK)

白髪で苦み走った表情をする佐藤浩市が、かえるくん(澤井一希、声:のん)とのやりとりで瞬間何かを取り戻すような顔になる。

「佐藤さんがとても楽しそうに演じてくださいました。多分、冒険譚だったからだと思いますね。ワクワクする展開でもありますし。かえるくんの声を演じたのんさんもそうですがイノセントなものが滲んでいると感じました」

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【画面に凝らされた意匠を隅々まで見る楽しみ】

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