村上春樹の名作をオリジナルに改変?《NHKを辞めた監督》が、ドラマ『地震のあとで』を“再びNHKで”撮った理由
「『その街のこども』を一緒に作ったNHKのドキュメンタリー畑の京田光広制作統括と、今一度、阪神・淡路大震災に向き合ってみたいと話しました。それから『拾われた男』(2022年)で組んだ山本さんに相談し3人で企画を練りました。
そのとき僕はすでにNHKを辞めていたのですが、この作品はテレビのような媒体で広く伝えたいと考え、NHKに企画を持ち込んで。放送枠をとって放送まで諸々取りまとめてくれたのが、『あまちゃん』などたくさんのドラマで組んできた訓覇圭プロデューサーです」
『その街のこども』『あまちゃん』『不要不急の銀河』、大河ドラマ『いだてん』、『LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと』と震災やコロナ禍を題材にした作品をNHKで作ってきた井上。ある意味、今回、この30年の集大成となったのではないか。
「ミニチュア」で撮影した意図
ただ、『かえるくん』の続編とはずいぶん大胆な発想ではないだろうか。
「いやまあそうですけれど(笑)、村上春樹さんの小説を題材にするうえで、自分たちなりに何か1つオリジナルのようなものを生み出したいと思ったんです。推測でしかないですが、村上さんサイドはそんな僕たちの気持ちをニュートラルに理解してくださって、1995年から現在(2025年)までの連作としてしっかり描くことを面白いと受け止めてくださったのかなと受け取っています。
いろいろなところでお話ししていますが、そもそも『その街のこども』を作るとき指針にしていたのが、震災後の神戸を歩いた村上さんが、その体験をもとに書かれた小説『神の子どもたちはみな踊る』だったんです」
『神の子どもたち』からはじまって『神の子どもたち』で井上剛はこの30年を一旦総括したともいえそうだ。それだけ画に力が入っているように感じる。
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