KDDI松田浩路新社長が就任会見で新施策発表、AIマーケット構想と300億円ファンドで通信の先へ挑む
高輪ゲートウェイシティへの本社移転はこうした連携戦略の象徴だ。松田社長は高輪を「江戸時代の交流の玄関口」「明治時代には日本初の鉄道が走ったイノベーションの地」と歴史的に位置づけ、「未来に向けた壮大な実験場」とする構想を語った。1万3000人のKDDI社員のデータを活用した様々な実験を通じ、「業界を超えてあらゆるアイデアを集積し、日本からイノベーションを発信していく」場にしたい考えだ。
2.「つなぐ力を世界に広める」
グローバル展開について松田社長は「世界で戦えているかというと、まだまだ足りない」と課題を認識しつつも、「日本は社会課題の先進国」と指摘。災害支援のドローン活用などで日本の成功モデルを作り、世界に広げていくビジネスに挑戦する意欲を示した。
ベンチャー企業支援も強化する。KDDIオープンイノベーションファンドの後続ファンドを組成するほか、AIやディープテック分野における日本起点のスタートアップの成長を目的とした、複数の海外ベンチャーファンドへの出資も決定した。出資総額は300億円規模を予定しており、「日本のスタートアップと共に世界へ出る挑戦」を行う。
3.「お客様の今とこれからにつながる」
KDDIが提供する価値の進化として、「auショップがない場所へ伺うauショップカー」や「ローソンとのパートナーシップから生まれる新しいコンビニ」などの構想を披露する。これらは単なる機能提供にとどまらず、「地域の見守りや防災の拠点」「ラストワンマイルをつなぐ配送拠点」など、新しい地域貢献、新しい地域活性を実現する拠点となるポテンシャルがあるサービスだ。
さらにKDDIはこの日、SpaceXと提携した衛星とスマホの直接通信サービス「au Starlink Direct」の提供開始も発表した。衛星とスマホが直接通信してSMSが送受信できるという、日本初のサービスだ。

なお、金融事業については2024年に三菱UFJフィナンシャル・グループとの資本提携の見直しがあり、auじぶん銀行を完全子会社化した一方でauカブコム証券を売却するなど一連の整理があったが、松田社長は「自前で銀行をしっかりやりながら、証券をまったくやらないわけではない」と述べ、住宅ローンを強みとしたauじぶん銀行の顧客基盤にあわせてサービスを拡大していく方針を示した。
順調さゆえの危機感
松田社長は会見の質疑応答で、KDDIの足元の課題について問われ、興味深い回答を示した。「基盤としてのサテライトグロース戦略はしっかり構築されているが、社内に危機感が欠けている部分がある」と指摘。「準備万端、先手必勝で、待っているだけでなく新しく作り上げていく会社になる」というマインドを醸成したいと語った。
その一例がモバイル通信業界で世界最大の展示会「MWC2025」への参加だ。KDDIはスペイン・バルセロナで開催されたこの展示会にブースを構え、100名を超える体制で臨んだが、その大半は「自ら立候補した20代から30代の若手社員」だったという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら