KDDI松田浩路新社長が就任会見で新施策発表、AIマーケット構想と300億円ファンドで通信の先へ挑む

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2022年以降、KDDIは高橋誠社長(現会長)のもと、「サテライトグロース戦略」を展開してきた。これは、通信事業を「月」に見立て、その周りの非通信事業を「衛星」として成長させる戦略だ。「通信×ライフデザイン企業」への変革を掲げ、金融(auフィナンシャルサービス)、コマース(Pontaポイント、au PAY マーケット)、エネルギー(auでんき)などの分野に事業を拡大。通信料収入依存からの脱却を図ってきた。

NTTグループがNTTドコモグループ再編と並行して通信と情報処理の融合(IOWN構想)を加速させ、ソフトバンクが宮川潤一社長のもとAI投資に軸足を移す中、KDDIはどのような差別化戦略で挑むのか。松田新社長の打ち出す方向性は、業界におけるKDDIの今後を占う重要な指針となる。

「夢中」が原点—松田新社長の経営哲学

「準備万端」「先手必勝」。一見すると守備的な「準備」だが、同社長の解釈は違う。「先手必勝を実現するために、常に先手先手で動き準備万端でいること」と強調する。新たな挑戦を成功させるための積極的な姿勢を表す言葉なのだ。

資料
周到に準備を重ね、先手を取ることを美学としている(筆者撮影)

松田社長の原点は1985年のつくば科学万博にある。当時中学生だった彼は、山口県から寝台特急に乗って万博を訪れた。「日本の大手企業による最先端サイエンスの展示に待ち時間も苦にならず、すっかり夢中になった」と振り返る。この体験が、後に工学の道へ進み、KDDIの前身である国際電信電話株式会社に入社する契機となった。

「好きこそ物の上手なれ」と松田社長。自身が「テクノロジーが好きで好きでたまらなかった」ように、すべての社員が「夢中になって取り組める機会」を作りたいと語る。この「夢中」こそがKDDIの原点であり、新たな挑戦、新たな進化への原動力だという。

2月の社長交代発表会見で高橋前社長は、「次の時代は6Gではなく、AIの時代」と指摘。その中で会社を牽引する人材として、「事業の知見が豊富でグローバルパートナーと対等にビジネス構築できる」松田氏を選んだと説明した。特にApple、Google、Qualcommといった海外大手との関係構築実績と、近年のSpaceXとの提携実現が高く評価されたという。高橋前社長は「AI企業のCEOは皆若い」と述べ、53歳という松田氏の年齢も「AI時代には最適」と評していた。

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