ドゥテルテ前大統領逮捕から1カ月、現職大統領の支持率低下、5月中旬の中間選挙を前に分断深まるフィリピン社会
「私がすべての責任を負う。長期間の手続きになるだろうが、私はこれからも祖国に奉仕し続ける」。ハーグへ送られる機内でそう語るドゥテルテ氏やつれた表情やマニラ国際空港で官憲に囲まれ弱々しく歩く姿の動画がSNSで拡散し、老人をいたわる文化が根強いフィリピンで国民の感情を揺さぶっている。
「もう年をとった。いつ死んでもよいが、祖国で死にたい」。ハーグの拘置施設で面会したサラ氏に父はそう話したという。こうした言葉のひとつひとつが支持者に限らず多くの国民の胸に刺さる。
政局の焦点は来月の選挙
5月12日に実施される中間選挙でも、ドゥテルテ陣営への同情票が集まりそうだ。正副大統領を除く上下両院や地方自治体の長、議員を一斉に選び、現政権の業績に対する審判となる節目の選挙だ。ドゥテルテ氏本人もダバオ市長選に出馬している。有罪が確定するまでは立候補が取り消されることはなく、このまま当選する可能性は高い。
定数24議席の半数が改選される上院選では、ダバオ市長時代からドゥテルテ氏の執事役だった現職のボン・ゴー氏が前大統領逮捕後の各種情勢調査で、それまでの5、6番手から一挙にトップに躍り出た。
前政権下の警察長官でICCから逮捕状が出されるとみられている現職のロナルド・デラロサ氏も当選圏外から一気に上位に浮上している。
しかしながらドゥテルテ側に有利にみえる世論の動向が政局を決定づけるわけでもない。
ドゥテルテ陣営はこの2人を除いて著名な候補がいない一方で、マルコス陣営が立てる12人は全体では票を減らしながらも9人ほどが当選圏内にいる。
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