ドゥテルテ前大統領逮捕から1カ月、現職大統領の支持率低下、5月中旬の中間選挙を前に分断深まるフィリピン社会

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「女性が夜でも出歩けるほど安全だった」「役人も大統領を恐れてまじめに働いていた」「取り締まり強化で覚せい剤の価格が高騰していた」

それに比べて今は「治安が悪化し、役人の怠惰が復活し、覚せい剤の値段が下がった」といった現政権への批判が加えられる。

偽情報も一挙に増えた。かつては前政権に批判的だった有名タレントがドゥテルテ氏の功績を認めるべきだと話した、▽中国の習近平国家主席や北朝鮮の金正恩総書記がドゥテルテ氏の逮捕にコメントした、▽アメリカのトランプ大統領がドゥテルテ氏の釈放を求めなければフィリピンに高い関税を課すと脅した、▽ドゥテルテ氏の逮捕を理由にロシアがウクライナとの和平交渉を拒否した……。

被害者遺族に向かう誹謗中傷

ICCの赤根智子所長が記者会見で一般論として「非加盟国で起きた事件についてICCに管轄権はない」と語った部分を切り取り、「ICC所長自身がドゥテルテ氏の早期帰宅を認めた」とのタガログ語のテキストを添えて投稿され、15万回以上再生された。

前政権は超法規的殺人に対する捜査に反発して2019年、ICCを脱退したが、ICCは加盟期間中の犯罪に絞って捜査しているとの立場を繰り返し表明している。

そうしたなかで、ドゥテルテ氏の刑事責任を追及し、ICCに訴え出ていた超法規的殺人の被害者の遺族ら対する攻撃が激化している。

遺族らは逮捕の報に「正義がようやく実現した」と歓喜の声を上げたのも束の間、ネット上で「殺されて当たり前のやつらだった」「金を受け取って騒いでいるおまえらのせいでわれわれの大統領が白人連中からひどい目に遭っている」などの誹謗中傷が嵐のように押し寄せている。

人権団体やリベラル派の議員らこそ遺族らに寄り添う姿勢を示しているものの、多勢に無勢の様相だ。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事