ドゥテルテ前大統領逮捕から1カ月、現職大統領の支持率低下、5月中旬の中間選挙を前に分断深まるフィリピン社会

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ドゥテルテ陣営は2016年の大統領選当時から真偽取り混ぜてSNSで発信するキャンペーンに長けていた。「トロール・アーミー」「トロール・ファーム」と呼ばれるネット上の集団がプロパガンダを展開していた。今回、彼らの活動が再起動した観がある。

ICCは3月14日の公判前手続きで「人道に対する罪」の起訴状を明らかにした。それによると、ドゥテルテ氏はダバオの正副市長時代の2011年から大統領任期中の2019年にICCを脱退するまでの間に、私設の暗殺団や警察に指示して少なくとも43人の超法規的殺害に関与したという。

ICCは立証に自信のある事件に絞り込んだ形だが、前政権下で警察官により殺害された数は政府発表でも6000人以上に上り、人権団体などは3万人が司法手続きを経ずに殺害されたと推計している。

これに対してSNS上では「数千、数万人が死んだかもしれないが、われわれの大統領(ドゥテルテ氏)は数百万、数千万人の国民を救った」と麻薬戦争を評価する声が上がっている。

現政権に衝撃与えた世論調査

現政権やマルコス陣営にとって、逮捕にともなうドゥテルテ派や支持者の反発はある程度織り込み済みだったものの、2025年4月2日に発表された世論調査の結果は衝撃だった。

政治コンサルティング会社パブリカス・アジアによる政権幹部らの支持率調査でボンボン氏の支持率は前回(2024年11~12月)の33%から19%に急落し、不支持率は38%から57%に上昇したのだ。

一方、ドゥテルテ氏の長女サラ・ドゥテルテ副大統領の支持率は37%から42%に上昇し、不支持率は37%と同率だった。

調査はドゥテルテ氏の逮捕4日後の3月15日から20日にかけて全国1500人を対象に実施された。大統領への不支持の理由として、汚職(15%)やインフレ(13%)への懸念といった定番の不満を抑えて、「前大統領に対する逮捕状執行」を挙げた人が16%と最も多かった。

マルコス政権への支持率の低下は全国すべての地区で記録されたが、なかでもドゥテルテ家の地盤であるミンダナオ島では63%が不支持を表明した。

ボンボン氏のいとこで、ドゥテルテ陣営との対立の急先鋒であるマーティン・ロムアルデス下院議長の支持率も20%から14%に低下し、不支持率は43%から56%に上昇した。

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