ドゥテルテ前大統領逮捕から1カ月、現職大統領の支持率低下、5月中旬の中間選挙を前に分断深まるフィリピン社会

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民間調査会社ソーシャル・ウェザー・ステーションズ(SWS)が3月19日発表した世論調査結果では、超法規的殺人について「ドゥテルテ氏が責任を負うべきか」と問うたところ、「強く賛成」が32%、「ある程度賛成」が19%と過半数が責任追及を肯定した。

一方、「強く反対」は16%、「ある程度反対」は9%にとどまっており、政権はドゥテルテ逮捕の衝撃はさほどではないだろうと高をくくっていた。

ただし調査は1800人を対象に逮捕前の2月15~19日に実施されていた。別々の調査で質問も異なることから即断できないものの、逮捕を境に国民感情が大きく変化しているように見える。

ドゥテルテ氏はそもそも歴代大統領で最も高い支持率を任期終了まで維持していた。その前大統領への現政権の仕打ちに多くの国民が疑問を感じている様子がうかがえる。

広がる前大統領への同情と郷愁

「ボンボンは気がふれたのかも」

マニラ首都圏近郊のブラカン州ハゴノイに住む主婦ヴィオレッタ・クルスさん(61)にドゥテルテ逮捕についての感想を求めると、表情が曇った。ボンボン氏の父の大統領(シニア)時代から熱烈なマルコス支持者だ。2022年の大統領選では、ボンボン氏の選挙集会にも何度か参加した。

シニアの時代は治安がよく、物価も安定していた、政府からの配給もあり、暮らしは今よりよかったと感じている。マルコス家が国の財産を奪ったり、反体制派を弾圧したりといった話は「多少あったとしても誇張されている」と考え、一家の復権を歓迎していた。

そのマルコス政権が前大統領を逮捕し、プライベートジェットに乗せてオランダへ移送した様子をSNSや動画で見たクルスさんは、ドゥテルテ氏が「KAWAWA(可哀そう)」だと感じる。なぜボンボン氏は年老いた前任者にあんな仕打ちをしたのか、複雑な気持ちだという。

クルス家では彼女と長男はマルコス派だが、次男は先の選挙で対立候補を応援した。政治や選挙の話になると険悪な空気になるので、家族で話すことはなくなっていた。しかしいまは3人とも口をそろえて、前大統領を「KAWAWA」という。

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