なぜ老子を学ぶと「弱い人」ほど勝ち続けるのか?部下が信頼する!リーダーがすべき「たった1つのこと」老子が説くリーダーの要諦!

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そうでなければ寝返った敵の忠誠を得ることはできません。敵だからといって徹底的に叩きのめす剛強さよりも、敵を味方につけるため、敵の風下に立つことも厭わない柔弱さこそが、最終的な勝利へと結びつくことになるのです。

下流に立つリーダー

この水になったリーダーは、マネジメントの現場では具体的にはどのような働きをするのでしょうか。この点について、老子は次のように述べています。

大河や海が百谷(=幾百の谷川)の王となるのは、谷川より一段と下ってその下流にいるからである。だからこそ百谷の王たり得る。そのため、民の上に立とうとするなら、必らず言葉で民にへりくだらねばならない。民の先頭に立とうとするなら、必らず自分の身を民の後にしなければならない。

成功を上とすれば失敗は下であり、下である失敗は皆が嫌うところになります。下流に立つリーダーとは、それらの失敗を一身に引き受け、失敗の責任はすべて自分で背負う人のことです。このようなリーダーがいれば、部下は自然に付きしたがっていき、部下の信頼を獲得し、その勢いを集めていくことができます。もし、失敗を叱責すれば、それは不争ではなく争いであり、柔ではなく剛となります。

ただし、「下流に立つ」、柔弱・不争、「衆人が嫌うところに住する」などは、ある程度以上の地位にある者(為政者、官僚、現在でいえば経営者、リーダー)に対して述べられていることに注意する必要があります。

中国思想では地位に伴う勢いを「勢位」と呼んでいます。地位には権限が伴っているため、勢位は強制力を伴います。

このような勢位を伴う者がへりくだると、それは大きな効力をもちます。たとえば、社長が平社員の地位までへりくだって行動すれば、その格差分の効力を部下に対して生み出します。逆に、平社員が社長のように振舞えば、マイナスの効力しか生み出しません。

水になるリーダーとは、自らのもつ勢位よりもへりくだることにより、この謙譲の力を生み出しているのです。つまり、水になるリーダーとは、下流に立つリーダー、すなわち、謙譲の力を効果的に活用するリーダーなのです。

原田 勉 神戸大学大学院経営学研究科教授

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はらだ つとむ / Tsutomu Harada

1967年京都府生まれ。スタンフォード大学Ph.D.(経済学博士号)、神戸大学博士(経営学)。神戸大学経営学部助教授、科学技術庁科学技術政策研究所客員研究官、INSEAD客員研究員、ハーバード大学フルブライト研究員を経て、2005年より現職。専攻は、経営戦略、イノベーション経済学、イノベーション・マネジメントなど。大学での研究・教育に加え、企業の研修プログラムの企画なども精力的に行っている。主な著書に、『OODA Management(ウーダ・マネジメント)』(東洋経済新報社)、『イノベーション戦略の論理』(中央公論新社)、『OODALOOP(ウーダ・ループ)』(翻訳、東洋経済新報社)などがある。

 

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