岐路に立つ名門「ダイナース」が挑む"厳しすぎるクレジットカード戦争"、攻めるメガ2社と富裕層強化の独立系を相手に勝ち筋はあるか
こうした収益基盤の低下を覚悟の上で、前述の三井住友カードや三菱UFJニコスが高還元を武器に顧客基盤を拡大しているのは、ひとえに銀行本体での「回収」があるからこそ。逆にいえば、そうした他事業での「回収」が不可能な独立系カード事業者たちが、ポイント還元という「大衆向け」から独自の優待を中心とした「富裕層向け」へこぞって舵を切っているというわけだ。
クレディセゾンは、2018年度に8%だったプレミアム・法人会員比率を、2026年度には35%にまで引き上げる計画を掲げる。JCBも、プレミアム会員向けにレストラン貸し切りイベントや会員制ゴルフ場でのコンペなど、差別化サービスの拡充に注力する。
富裕層向けで最大手のアメリカン・エクスプレスも、若い富裕層向けに新カード「アメリカン・エクスプレス ゴールド・プリファード・カード」の発行を開始するなど、富裕層の獲得合戦が起きている状況だ。
相次ぐ減損、伸び悩む利益
競争が激しくなる中、カード業界内での「ダイナースクラブ」の存在感は希薄だ。
三井住友トラストクラブは、2018年度にはシステムコストが想定を超えたことにより利益が低迷し、約120億円ののれん減損を実施。さらに、2019年度には新型コロナ禍に伴う高額消費の低迷も想定し、のれん64億円、固定資産86億円などで計180億円を減損処理した。
当時、今後の戦略として「高所得者層に向けたプレミアムサービスの強化による会員拡大」を目指すとしたが、現在でも純利益は伸び悩んでおり、400億円強もの買収費用を投じたリターンは得られていないのが実情だ。

競合するカード会社の社員は「信託銀行への送客は行っているのだろうが、『ダイナースカード』としてどのように強化していくのかが見えてこない」と指摘する。資産運用など信託銀行の強みを生かすためにも、カード事業単体で会員基盤の拡大を実現する強みを作り上げることが必要不可欠だ。
合併後の新体制において、日本におけるダイナースブランドの価値を再構築し、この先も“特別な一枚”であり続けられるのか。ダイナースはその岐路に立っている。
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