岐路に立つ名門「ダイナース」が挑む"厳しすぎるクレジットカード戦争"、攻めるメガ2社と富裕層強化の独立系を相手に勝ち筋はあるか

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銀行各社がカード事業に力を入れる背景には、「金利のある世界」が戻ってきたことがある。従来は法人向けビジネスが最大の収益源だったが、金利上昇をきっかけに個人顧客の預金残高を確保する動きが活発化している。

とくに目立った動きを見せているのが、三井住友フィナンシャルグループと三菱UFJフィナンシャル・グループの2社だ。

三井住友銀行は2023年に銀行口座・カードなどが一体化した「Olive」の提供を開始。クレジットカード積み立てやポイント高還元などを武器に、勢力を拡大させている。

一方の三菱UFJFGも、口座開設とカード発行をセットにしたキャンペーンを皮切りに、銀行とカードの連携に邁進。三菱UFJニコスの社名を将来的に「三菱UFJカード」へ変更すると発表するなど、ブランド認知の強化に取り組んでいる。

ひるがえって、同じ銀行系でも三井住友トラストグループは厳しい立場に追いやられている。看板ブランドで富裕層向けの「ダイナースクラブ」の認知度が、同じ富裕層向けブランドの「アメリカン・エクスプレス」に大きく劣っていることに加え、クレディセゾンやJCBといった独立系カード事業者が「富裕層強化」を打ち出しているためだ。

クレディセゾンはセゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス・カードなど富裕層向けの施策を強化(写真:筆者撮影)

手数料率低下で富裕層向けビジネスに活路

カード各社が富裕層強化を打ち出した背景には、加盟店手数料の低下がある。

従来、日本は海外と比べてクレジットカードの加盟店手数料率が高いとされてきた。だが、三井住友カードが昨年11月1日から新規中小加盟店の料率を2.7%程度から1.98%に引き下げる新たなプログラムを開始。これに追随する形で、各社とも加盟店手数料を引き下げている。

PayPayなどコード決済事業者の台頭に対応した動きだが、カード事業単体で見ると収益の大幅な低下は避けられない。クレジットカード事業は薄利多売のビジネスで、数パーセントの粗利益から消費者へ還元するポイントや特典、国際ブランドへの支払い、自社の営業費用などを賄うモデルだ。そのため、わずか0.72ポイントの引き下げといえど、収益基盤へ与える影響は甚大だ。

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