世界第4位!東京の「都市力」、強さの秘密 東京の「強み」と「弱み」を分析する

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GPMAIでは、世界の10の都市圏(都心から50キロメートル圏を設定)を対象に、数十に上る指標を収集し、比較を行っている。東京都市圏をほかの都市圏と比較してみることで、まず明らかになるのは、「人口密度」の高さである。東京のみならず、アジアの都市圏は高い人口密度を示している。GPCIの上位都市であるロンドン、パリ、ニューヨークと比較しても、都市圏としての東京の人口密度は極端に高い。

ところが、「人口増加率」から見ると、都市圏の別の側面が見えてくる。この指標では、多くの移民の目的地であるロサンゼルスが最大値であり、大阪が最小値となっている。またロサンゼルスと同様に移民都市であるニューヨークや、中国各地から多くの移住者が流入する上海も高い数値を示している。一方、東京はロンドンやソウルとほぼ同水準で、人口増加率は高くない。

つまり都市圏としての東京は、人口の集積では高い水準を保っているものの、その増加の度合いは緩やかであることがわかる。これは、集積度も増加率も高い上海や、集積度は低いものの、人口増加を続けるニューヨークとは異なるパターンである。

さらに、東京都市圏には、もうひとつ大きな特徴がある。人口密度がきわめて高いことはすでに述べたが、それが30キロメートル圏のみならず、これをはるかに超える50キロメートル圏にまで広がっていることである。

確かに、東京以外のアジアの都市も、30キロメートル圏に人口の半分以上が集積している状況は東京に似ている。しかし都市圏の規模としては、いずれも東京より小さい。東京は圧倒的な人口集積を誇る、世界第1位の巨大都市圏なのである。

世界に誇るべき東京の都市運営能力

特筆すべきは、都市圏としての東京が、膨大な人口を抱えながらも、極めて高い精度で日々運営されていることである。東京には巨大な都市を極めて高い正確性をもって管理する洗練されたシステムが備わっており、その高度な運営能力は、世界に誇るべきものである。

都市本体を支える都市圏に人口の集積があることは、生産と消費の側面から見れば、集積の乏しい都市より優位であることは間違いない。ただし、そのプラス要因が都市と都市圏にとって有効に働くためには、集積・集中が生み出す混雑などによって機能不全が発生する外部不経済を克服することのできる十分なインフラ整備と、スムーズな都市運営を行うことが条件となる。つまり、ヒトやモノの流れがその都市圏の集積にとって適正か否かが問われるのである。

以上のことをまとめると、都市、都心、都市圏の3つの次元の特徴から言えることは、東京はすでに高い競争力を有しているとともに都市における弱点も存在していること、そして、今後、さらに競争力を高めるためには、2030年までに都市空間の更新をより積極的に行い、ロンドンやニューヨークのように世界中からヒト・モノ・カネを集める都市になる必要があることである。その起爆剤となるのが、言うまでもなく2020年東京五輪である。

市川 宏雄 明治大学名誉教授

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いちかわ ひろお / Ichikawa Hiroo

明治大学名誉教授/帝京大学特任教授/一般社団法人 大都市政策研究機構・理事長/特定非営利活動法人 日本危機管理士機構・理事長。

1947年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、ウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了。1997年、明治大学政治経済学部教授に就任。専門は都市政策、危機管理、テレワーク、次世代政策構想。「世界の都市総合力ランキング(GPCI、森記念財団)」主査。『東京一極集中が日本を救う』(ディスカヴァー携書)、『東京2025』(東洋経済新報社)、『山手線に新駅ができる本当の理由』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など著書多数。

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