停戦の対象となっている黒海に関し、クザン氏は「ウクライナの海上無人機が革命をもたらし、プーチン大統領はクリミア半島から比較的安全なロシアの港まで艦隊を撤退させた。ロシアの奥深くでは、ウクライナの長距離ドローンが軍事施設、物流ハブ、エネルギー・インフラを頻繁に攻撃している」と、ウクライナの軍事力の拡大を説明している。
ドローンメーカー200社以上、国産化率は100%
ドローン部門の成長は著しく、現在、ウクライナは年数百万台のドローンを生産する能力を持っているという。ドローン生産企業は200以上あり、国産化率は100%だ。軍事用ドローンで、ウクライナは技術的に世界のリーダーになっている。また「キーウが必要な資金を確保できれば、国内のミサイル生産は数カ月以内に倍増すると予想している」と書いている。
戦争が始まった時のウクライナの軍需産業の規模は10億ドルだったが、現在では350億ドルにまで膨張している。そして「ウクライナは軍隊が使用する武器、弾薬、装備の約3分の1を生産している」と、ウクライナの軍需産業の変貌ぶりを紹介している。
実際、ゼレンスキー大統領は、海外からの防衛セクターへの投資を奨励している。「すでに多くの国が多額の資金を提供し、ウクライナの防衛産業の中で共同プロジェクトを推進している。アメリカが欧州から撤退すれば、欧州諸国の防衛費が増大するので、共同プロジェクトのペースは早まるだろう」。
クザン氏は、2022年にロシアはウクライナの軍事力を過小評価するという過ちを犯したとする。「ウクライナの軍事力の増大はロシアとの和平交渉で考慮されなければならない。ウクライナは防御的になっているわけではなく、ウクライナを危機にさらすような和平交渉は受け入れないだろう」と語り、「ウクライナを欧州の変化する安全保障システムの中心に位置づけるべきだ」と主張している。これは、軍事大国ウクライナをアメリカ抜きのNATOの主軸にせよ、ということだろう。
ここには「螳螂の斧」のウクライナはいない。これが「もう1つのウクライナの姿」なのか。こうした知見を得ると、ウクライナ戦争の和平交渉の見方も変わってくるかもしれない。
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