ウクライナ戦争の停戦交渉の裏側(下) 親ロのアメリカはもはや不要。 「欧州最強軍事国」にのし上がったウクライナが新安保システムの主軸に?

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ウクライナは戦争中であることから、2024年5月の大統領選挙を延期した。それを根拠にプーチン大統領は、ゼレンスキー大統領を選挙で選ばれていない正当性のない大統領だと決めつけ、トランプ大統領も同じ理由から、ゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼んだ。

どんな休戦協定も国民の支持なしに進められないことを考えると、米ロの大統領の認識が妥当なら、ゼレンスキー大統領の下では休戦交渉は進展しないことになる。

しかしながら2月25日、ウクライナ議会はゼレンスキー大統領の正当性を全会一致で承認した。同国が戦争状態にある間に大統領選挙を延期することは合憲であるとし、プーチン大統領とトランプ大統領の批判を否定した。

キーウ国際社会学研究所が2025年2月上旬に行ったゼレンスキー大統領に対する支持率調査では、ウクライナ人の57%がゼレンスキー大統領を支持している。また、ウクライナの地元紙は、ホワイトハウスでの一件の後、支持率が8ポイント上昇したと伝えている。

同研究所は3月12〜22日にかけて世論調査も実施している。ロシアが停戦の条件として提示している「ウクライナの兵の動員の中止」「西側によるウクライナへの武器提供の中止」「西側によるウクライナへの情報提供の停止」の3条件が受け入れられるかという問いに対して、79%が受け入れられないと答えている。

また「ウクライナの安全保障を伴わない停戦」に関する質問では、62%が反対と答えている一方、32%は受け入れる用意があると答えている。「安全保障としてNATO加盟」については、58%が支持、32%が反対と答えた。

約8割のウクライナ国民が「戦い続ける」

このように、3割以上のウクライナ国民がある程度の妥協はやむなしとしているが、「アメリカが軍事援助をやめた場合どうすべきか」には82%が「何があっても戦い続ける」と答えている。「ロシアに降伏する」と答えたのは8%にすぎない。

地域別に見ると西部では83%の人が、戦争が行われている東部でも78%の人が「何があっても降伏すべきではない」と答えている。長い間、ロシアとソビエトに弾圧されてきた歴史を持つウクライナ人にとって、ロシアへの降伏は受け入れられない現実のようだ。

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