40代で離婚・無職・自殺未遂→50代同士で再婚した男性の実話。2人で「組体操」するほど仲良し夫婦、実母も同居する家に義理の娘が里帰り出産

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夫婦喧嘩がなかったわけではない。まったく違う人生を歩んできた50代同士が一緒に暮らすのだから当たり前だ。孝太郎さんはじっと我慢してやがて爆発する傾向があり、真美さんは何事も「言い過ぎる」欠点がある。最初の1年でたくさん喧嘩をして学んだと、真美さんは前向きに語る。

「お互いにいろいろ抱えているものがあります。触れないほうがいい話題もわかりました。一歩引くことができるのは、歳がいってからの結婚の良さですね」

昔気質のところがある孝太郎さんは当初、真美さんに「今までがんばってきたのだから外で働く必要はない」と伝えていた。しかし、この町で知り合いのいない真美さんが自分の年老いた母親とずっと一緒に過ごすのもかわいそうに思えた。結婚して1年経った頃、「そろそろ社会とのつながりを作ったら?」と提案。お世話好きの真美さんは障害者施設での入浴やトイレの介助の仕事を見つけた。

「すぐにハマりました。頼まれて、2つの施設を掛け持ちして働いています。夜勤も含めて月に200時間ぐらいの労働で、収入は彼と同じぐらいです」

日常生活でお世話欲が満たされて、遠方に住む長男に電話することもなくなり、長男も喜んでいると笑う真美さん。両親もパワフルで情に厚い真美さんを頼って愛知県内に移り住んでおり、弟、娘たち、孫たちも含めて家族の絆は強い。義母と孝太郎さんと一緒に住む家に娘が「里帰り出産」に帰って来たぐらいだ。

「母は何が何だかわからなかったようですが、家が若い世代でにぎやかになったので喜んでいたようです」

“老後計画は白紙”という贅沢な悩み

おおらかなようで繊細な孝太郎さんのほうは真美さんの家族に受け入れてもらえるのかをつねに心配している。真美さんは「大丈夫」と太鼓判を押す。

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「子どもたちからすれば、自分たちに何かくれるよりも母親が幸せそうにしていることが一番だと思います。だから、今の孝太郎さんは私の家族全員から認められているんです」

そんなことはないよ、と声を小さくする孝太郎さん。親や子ども、さらには孫のことがあるので、真美さんと2人きりの老後の計画も立てられないとぼやく。絶望して自殺を図った10年前、こんな贅沢な悩みを抱えている自分を想像できただろうか。やはり人生はやり直しがきくのだ。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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