【反・ミニマリズム!】 DIYを趣味に単身赴任「つくりながら暮らす」日々と家族との程よい関係性、転勤族《会社に"旅をさせてもらっている"》

✎ 1〜 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうして手に入れた300㎡の広大な土地で、小屋づくりが始まった。廃材を活用して壁を作り、屋根を張り、断熱材を敷き、薪ストーブまで設置。 冬でも過ごせる空間を自らの手で作り上げた。

家だけでなく、車もまた、彼にとっては「作る」もの。ヤフオクでハイエースを落札し、車中泊仕様に改造した。後部座席をフラットにして、FFヒーターやルーフキャリアも設置。 キャンピングカー仕様に仕上げた。

ハイエースの中
車内では寝泊りができて仕事もできる(撮影:大澤誠)

「車はもうひとつの家のようなもの。これがあれば、どこへでも行ける。家も車も、自分の手で自分に必要な形に整える過程が、楽しいんです」

釧路湿原の夜がDIY生活の原点

宮本さんの「自分の手でつくる」というこだわり。そのルーツをたどっていくと学生時代に遡る。もともと宮本さんは教員志望で、北海道教育大学に通っていた。当時、釧路湿原でのフィールド実習で体験した景色が原点になっている。

「日本一広い釧路湿原のど真ん中で、夏はカヌー、冬は凍った地面をクロスカントリースキーで進んで、ヤチダモの木の年輪を調べたりする——。そんな実習を1、2年生で経験し、3年生になると真冬の湿原に4泊するんです」

極寒の夜。気温はマイナス27度。張ったのは、ネイティブアメリカンが使うようなティピという簡易テント。その中央に薪ストーブを置き、火を絶やさぬよう交代で見張る。

「ストーブの火が消えたら死ぬ。そんな極限の状態の中で、旅暮らしの面白さを学びました。薪をくべ、炎を育て、居場所を作る。ただそれだけの行為が、生きることそのものだったんです」

火を守りながら、静まり返った湿原の夜に耳を澄ますと、風の音、遠くで鳴く動物の声、炎がパチパチとはぜる音が聞こえただろう。そんな圧倒的な自然のなかで、人ができることの小ささと、逆に手仕事が人を生かすことの確かさを、感じたに違いない。

次ページ自分の手で作った小屋の様子は…?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事