理想の住まいを求め、中古住宅を購入。1年かけてDIYを重ね、漆喰を塗り、床を張り替え、家族がくつろげる空間へと作り替えていった。そうやって家が完成し「さあここで暮らそう」と思った矢先、異動辞令が届いた。
「結局僕は、自分で作った家に3カ月しか住んでいないんです」と宮本さんは笑う。そこから10年にわたる単身赴任生活が始まった。
現在家族は静岡県内で暮らし、自身は単身赴任先の神奈川県で仕事をしている。物理的な距離はあるものの、お互いにあまり気にしていないと、宮本さんは言う。
「妻も北海道出身だからか、距離に対する感覚が独特なんですよ。僕の家がある横浜市から家族の住む富士市まで120〜130kmくらいあるけれど、ちょっと車を走らせれば着く感覚らしくて。妻は『ちょっとコストコ行ったから、ついでに寄った』って、車で突然この部屋にやってきたりします」
そんな妻の価値観に、「なるほど、そういうものか」と、同じく北海道出身の宮本さんは共感する。長距離を厭(いと)わず、会いたい時や必要な時には会いに行く。だが、普段は「いなくても大丈夫」と思えるくらいの距離感でいる。

「家族とはあっさりした付き合いですね。たまに妻に『アイシテルヨ』ってLINEすると、『今度は何が買いたいの?』って返されます(笑)」
甘すぎず、冷たすぎず、互いに干渉しすぎない。その背景には、信頼がある。そんな距離感を保っている。
新たな自分を開拓するために「買う」
宮本さんの買い物スタイルは、一般人とは一線を画している。買うことは単なる所有ではなく、新たなプロジェクトの始まりなのだ。
「何か欲しいものができたら、まず『作れるか?』を考える。でも、すぐには作れないものもあるでしょう。だから素材を買って、それをどう自分のものにしていくか考えるんです」
コロナ禍でテレワークが増え、閉塞感を感じたとき、「だったら広い場所に仕事場を作ればいい」と思い立ち、ネットで富士山のふもとに土地を買った。
「富士山を眺めながら仕事できたら気持ちいいだろうなと思って、『それなら、もう家を作っちゃえ』と。『家いちば』というサイトでいい土地を50万円で見つけて、持ち主に交渉したら、破格の15万円で買えてしまいました」
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