『おしっこちょっぴりもれたろう』などで知られるヨシタケシンスケさんが”理屈っぽい絵本”と“気軽な絵本”どっちも作る意外な理由

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──ヨシタケさんの絵本は、ゲラゲラ笑って読める作品もあれば、死や多様性について考えさせられる作品もあります。2013年のデビューから30作以上描かれてきて、毎回どうやって作品の方向性を決めているんですか。

そこは完全に順番ですね。理屈っぽいやつと、気軽なやつを交互に描きます。性格的に、逆なことがやりたくなるんですよね。あと、おっしゃるように2つの方向性があるものの、僕としてはどちらも同じように読ませたいと思って描いています。

ひとつ目の方向はタブーとされるテーマを扱った絵本ですね。人の死について描いた『メメンとモリ』や、嫌いなやつを描いた『ころべばいいのに』がそれにあたります。

もうひとつの方向が「おしっこってちょっと漏れるよね」というくだらないテーマの『おしっこちょっぴりもれたろう』。

僕はこの両極を同じ熱量で描きたいんです。わかりやすく良いことを言う本もあれば、すごくいやらしいことを描いた本もある。ひとりの作家から、両極端の表現が出てくるさまを見せたいんです。

絵本『ころべばいいのに』(ブロンズ新社)に登場する「アイツ」。展覧会会場でも存在感を放っている(撮影:梅谷秀司)
ヨシタケシンスケ・1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。絵本、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど多岐にわたり作品を発表している。2013年『りんごかもしれない』でデビュー。2児の父。子どもの頃の将来の夢は大工さん。(撮影:梅谷秀司)

──なぜ、その考え方に至ったんですか?

絵本作家のトミー・アンゲラーの存在は大きいですね。彼は『すてきな三にんぐみ』のような誰もが知っている名作を描いた一方で、痛烈な社会風刺だったり、子どもには絶対見せられない、いやらしい画集も遺している。

ひとりの人間の内側にはいろんな思いがあって一筋縄ではいかないことを、アンゲラーは全作品を通して教えてくれる。その感じに憧れますね。

「この人、作品見ると優しそうだけど、実際はすごく冷たい人だったみたいよ」っていうパターンもいいですねぇ。「そこでバランス取ってたんだ!」って嬉しくなるんですよ。

その人間っぽさに興奮する。もっというと、作者が時間を経て変わっていく感じも大好物です。

僕はこれから落ちぶれていきます(笑)

──どういうことですか?

「中期まではよかったけど、後期になるとろくでもない」みたいに言われるアーティストがいいなぁって思うんです。だから僕は自分が落ちぶれていくのが楽しみで。絵本もコンスタントに出させてもらって、大きな展覧会まで開かせてもらった。世の中、こんなにうまくいくはずないでしょう。だから私はこのあと転がり落ちます(笑)。そこも含めて楽しんでほしいです。

──そのさまも含めてヨシタケシンスケだと。

そう言いたいですね。今、絵本で描いていることに嘘はないし、実際に僕が思っていることですけど、人って歳を重ねれば考え方が変わるじゃないですか。だからこそ、今思ってることをちゃんと形に残しておきたいんです。そうすることで変化を見てもらえますから。

マーカー
愛用のマーカーと思いきや、10年間ほぼ使わず新品という付箋付きの謎の展示物も見ることができる(撮影:梅谷秀司)

後編『絵本作家ヨシタケシンスケの意外な「創作の原動力」』では、ヨシタケシンスケさんが「コミュニケーション」を大事にしていること、創作の原動力などを聞いた。

現在、展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ」が開催中。絵本の原画や作品世界を再現した展示などが見られる。
2025年6月3日(火)まで
東京・CREATIVE MUSEUM TOKYO
(TODA BUILDING 6階)
安里 和哲 ライター、インタビュアー、ブックライター

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あさと かずあき / Kazuaki Asato

1990年、沖縄県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。鳥羽和久編著『「学び」がわからなくなったときに読む本』(あさま社)の対談構成や、ブックデザイナー・鈴木成一の「装丁の学校」のルポ記事など、多方面で活動。連載に東出昌大の人生相談「赤信号を渡ってしまう夜に」(QJWeb)や、芸人インタビュー「First Stage」(テレビ朝日「logirl」)がある。「BRUTUS」「an・an」「クイック・ジャパン」などのカルチャー誌、「GOAT」や「小説すばる」などの文芸誌・小説誌でも取材記事を書く。

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