実は「何種類やってもOK」なサーティワンの1さじ試食。「消費者との信頼を築き、ファンを生み出す」様々な施策の深いワケ

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そして、その存在は知っていても、実はこの試食が「何種類やってもOK」なことは知らない人が多いのでは?

「あれも、それも味見させてください」と言えば、際限なく提供されるという。B-R サーティワン アイスクリーム株式会社 マーケティング部 部長 橋本貴史さんは店舗に勤務していた際、10種類以上味見をする客もいたそうだ。

テイストスプーン
テイストスプーンの試食は、何種類でも無料で可能だ(写真提供:サーティワン)

筆者はサーティワンにかれこれ40年以上通っているが、まったく知らなかった。そう伝えると、「伝え方がまだまだ力不足で申し訳ありません。ご存じない方がいらっしゃるのは課題ですね」と丁寧に詫びられた。

なぜ「1さじ試食し放題」を続けているのか

なぜサーティワンはこのようなサービスをしているのか。そこには、創業からの理念が込められている。アメリカ発祥のサーティワンの理念は、「We make people happy」、意味は、「アイスクリームを通じて、人々に幸せをとどける」だ。

その根幹には、「ただ商品を届けるのではなく、FUN(楽しみ)も届ける」姿勢があるという。このため、サービスの最も重要な目標として、「体験価値の向上」を掲げているそうだ。

この「体験価値の向上」を象徴する存在が、「選ぶ楽しみ」を提供するテイストスプーンなのである。だからいつ何時も全店で、そのときどきのおすすめのフレーバーを提供している。おすすめが大人向けのフレーバーのときは、子どもには別のフレーバーを出しているそうだ。

「私たちはアメリカ発祥のアイスクリーム店で、日本では最初知名度がありませんでした。試食することで認知を広めて成功したビジネスなんです。だから50年経っても、ずっと続けているのです」

テイストスプーンには、「選ぶ楽しみ」だけでなく、「返報性の原理」に基づくビジネス戦略も隠されているのではないだろうか。返報性の原理は、1960年にグールドナーという社会学者が唱えた、「人が相手から何かをもらった際に、お返しをしないと申し訳ない」と感じる心理的な法則だ。

法則に則って考えれば、試食を多くすればするほど、客単価アップやリピーター獲得というビジネス成果につながる可能性は高い。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事