4月から育休給付金が”実質”手取り10割に!複雑すぎる制度を社労士がわかりやすく解説!支援拡充も片働き世帯にそびえる≪35万円の壁≫
こうなると、男性も14日以上の産後パパ育休を取らないと損だ、という話になります。さらに「実質的な手取りが10割ならば、産後パパ育休を取ってみよう」と考える男性は増えるかもしれません。もちろん、これが狙いではあるのですが、注意しなければならないポイントもあります。それは、手取り10割相当とうたっていても、これらの給付金には、上限額が設定されているということです。
各給付金は、「休業開始時賃金日額」をもとに算定されます。「休業開始時賃金日額」という言葉はあまり耳慣れないかもしれませんが、原則として育児休業開始前6ヶ月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除く)を180で除して計算されます。ただし、これには上限額が設けられており、現在は1万5690円(2025年7月31日まで)が上限となっています(この額は、毎月勤労統計の平均給与の増減をもとに、毎年8月1日に見直されます)。
つまり、「出生時育児休業給付金」は28日の休業で、最大29万4344円(1万5690円×28日×67%)が支給上限額となります。同じように、「出生後休業支援給付金」は、5万7111円(1万5690円×28日×13%)が上限となり、両者をあわせて35万1455円が28日休業した場合の支給上限額となります。
これは「育児休業給付金」+「出生後休業支援給付金」の場合も同様です。給与の額面が月額約47万円以上の場合は、支給上限額に注意が必要です。なお、産後パパ育休・育児休業中に会社から給与が支払われる場合、支払われた賃金額に応じて給付金が減額され、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上となると支給されません。
専業主婦世帯に立ちはだかる「35万円の壁」
共働き世帯であれば、仮に夫婦で支給上限に達しているパワーカップルの場合でも給付金は2人あわせて70万円超となるので、それなりに生活に困ることはないだろうと思われます。一方、毎月の給与手取り額が40万円程度で、夫だけの収入でギリギリの生活をしている場合は、すでに5万円程度の赤字となってしまいます。
「35万円もあって暮らせないの?」と、疑問を持たれる方もいるかもしれません。しかし、首都圏では物価の高騰も激しく、月々の家賃や住宅ローンの返済等にゆとりがない家庭も少なくありません。そこに、子育てにかかる費用もプラスされるとなれば、なおさらです。紙おむつの価格も、近年は大幅に上昇しています。
住宅に関していえば、東京23区で販売された新築マンションの平均価格は2年連続で1億円を超えており、月々の返済に20万~30万円のローンを抱えているケースもあります。手取り10割とうたっていても、「全然10割にならない」という人もおり、稼いでいる人ほど10割とは程遠くなってしまう現実が見え隠れします。特に、片働きの専業主婦世帯の場合、支給上限額の約35万円が壁となって、「夫に育休を取ってもらいたいが、金銭的にためらってしまう」という声も、一部で聞かれます。
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