「人間はなぜ働く必要があるのか?」狩猟採集社会まで遡って、働き方の歴史を考えてみる

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この農業革命は、自然と人間の関係という観点からは、人間が自然空間に手を加えて文化的な空間に変えていき、その管理を行うようになったことを意味しています。そして、農業革命による農耕社会への移行は、人間に大きな苦難を与えることにもなったのです。

そもそも、農耕社会では食料の種類が少なく、干ばつ、火災、地震などの災害で小麦やジャガイモなどの作物が台無しになると、人びとは深刻な飢餓に見舞われることになりました。また、天然痘、麻疹、結核などの感染症が家畜を媒体として人間にも広がるようになり、農耕民は感染症の蔓延にも悩まされるようになりました。

さらに、植物の栽培と家畜の飼育には時間と手間がかかり、貯蔵した食料や定住する土地(村落)を外敵から守るために防壁を作り見張り番を置くことも必要になるなど、労働の量とともにストレスも増えたとされています。そもそも、長年の狩猟採集社会のなかで進化し生存してきたホモ・サピエンスの身体は、木に登って果実をとったり獲物を追いかけたりすることに適応しており、農耕作業には向いていませんでした。

農耕作業で多くの疾患に悩まされる

そのため、農耕作業を行うなかで椎間板ヘルニアや関節炎など多くの疾患にも悩まされるようになり、狩猟採集民より寿命も短くなったと推測されています。

このような苦難があったにもかかわらず、農耕は狩猟採集よりもはるかに生産性が高かったため、農耕民は、食料の増加と人口の増加を伴いながら耕作地と定住地を拡大していき、数の力で狩猟採集民を圧倒するようになっていきました。

さらに、約8000年前になると、農業革命の結果、都市が誕生するようになります(いわゆる「都市革命」)。農業生産性が高まって官僚・芸術家・政治家などの都市の人口を養うのに十分な食料の余剰が生み出されるようになると、都市が出現し、農村部では食料の生産、都市部では地位・富・娯楽・権力の追求がなされるようになったのです。

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