「人間はなぜ働く必要があるのか?」狩猟採集社会まで遡って、働き方の歴史を考えてみる
狩猟採集社会における主な労働は、食料になる動物の狩りをし、木の実や昆虫などを採集することでした。その生活の実態は極めて多様であったと考えられていますが、多くの場合数十人、最大でも数百人からなる小集団で生活し、食料となる動物や植物を探して移動していたと推測されています。
この狩猟採集生活での労働時間は比較的短く、ビタミン、ミネラルなど必要な栄養素を含む多種多様な食べ物を摂取し、感染症に悩まされることもなく、一般に背が高く健康的な生活を送っていたといわれています。
この狩猟採集社会では、食料を貯蔵する技術がなく、手に入れた食料をすぐに分け合いながら食べていたことから、短期的な思考、分かち合いの文化とともに、必要以上の物質を求めない性向をもっていました。その後の農耕社会と比べると、平等で、安定し、永続的な社会が形成されていたのではないかといわれています。
悠 太「人類が狩りや採集をしていた時代って、人類の歴史のほとんどを占めていたって知らなかった」
さくら「それに、そのころの人間って、自然と一体化しながら、想像以上に豊かで安定した生活を送っていたんですね」
真 由「現代のナチュラリストと通じるところがあるのかな。その後の社会でも、この自然主義って続いていくんでしょうか」
農業革命と農耕社会への移行
人類誕生から250万年にわたる長い狩猟採集社会を経て、現在より約1万年前(紀元前8500年ごろ)に農業革命が起こり、農耕社会へと移行していくことになります。
そのきっかけは、気候変動にあったといわれています。およそ1万8000年前から1万1000年前の最後の氷期から現在の温暖な時期(間氷期)への移行によって、生態系の大きな変化が起きました。この環境変化により一部の狩猟採集民の食料不足が深刻化するなかで、食料を貯蔵したり、植物の栽培と動物の家畜化を試みたりすることで自ら食料を生産しようとする農業革命が始まります。
その動きは、トルコ南東部とイラン西部の丘陵地帯などの限られた範囲でゆっくりと進み、紀元前9000年ごろまでには小麦の栽培とヤギの家畜化に成功したといわれています。
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