「認知症は生活習慣病の1つ」80歳を超えた認知症研究の第一人者が強調するワケ
失明の原因になる「糖尿病性網膜症」を引き起こしたり、足先などを切断せざるを得なくなる「糖尿病性壊疽」などが起こる危険があるのは、血流が悪くなるせいで体の隅々にまで血液が届かなくなるからです。
同じ理由で脳にも血液が届かなくなれば、脳は栄養不足や酸素不足となって活性が失われ、老廃物を排出する力も低下します。それがアミロイドβなどのタンパク質を溜め込む原因となって、アルツハイマー型認知症の発症を助長することにもつながってしまうのです。また、そもそも動脈硬化は脳血管障害の最大のリスク因子の一つですから、血管性認知症のリスクも高まります。
最新の研究でわかった糖尿病と認知症の関係
最近の研究では、糖尿病そのものが、認知症の主原因にもなり得ることもわかってきました。
東京医科大学の羽生春夫教授のグループは、糖尿病を伴うアルツハイマー型認知症と診断される患者の中には、脳の中でアミロイドβの蓄積は必ずしも起こっていない代わりに、脳の深いところにある細い血管が詰まるタイプの脳梗塞が見られるケースがあることを突き止めて、「糖尿病性認知症」と名付けました。
アルツハイマー型認知症と全く異なる病態というよりは、糖尿病による糖代謝異常が深く関与し、軽いアルツハイマー病でも、認知症の症状が出やすくなることを示唆するもので、糖尿病の視点からのアルツハイマー型認知症の予防法や治療法の解明につながることが期待されています。
動脈硬化を引き起こす高血圧に関しては、アルツハイマー病との関連は見られなかったものの、やはり血管性認知症とは非常に関係が深いことが、同じ久山町での別の調査でわかっています。