鉄鋼より自動車産業を優先した石破政権の腹の内 「日本製鉄で譲歩し関税逃れ狙う?」トランプ懐柔へ深謀遠慮

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日本製鉄の考え方に詳しい関係者に尋ねたところ、「トランプとの関係はすべて取引だ」と主張した。

言い換えれば、日本製鉄の追加譲歩によって、トランプに「前の取引はUSスチールにとって悪い取引だった。今度は良い取引となる」と言わせてあげることだ。

そのプロセスは、ラトニック長官と日本製鉄の幹部(おそらく森高弘副社長)との会談から始まるだろう。日本製鉄は、彼がトランプ大統領を説得し、橋本英二日本製鉄会長をトランプ大統領本人に会わせることを期待している。

日本製鉄は何を承認するよう求めるのか?

日本製鉄は、トランプ大統領に当初の合併案件を承認してもらいたい。日本製鉄はUSスチールを1株当たり55ドルで100%買収し、総額150億ドルを支払う。 さらに、USSの後進高炉の近代化と脱炭素化技術に少なくとも26億ドルを投入し、既存の高炉をしばらくは停止させない。

日本製鉄が100%未満の支配権を受け入れる条件もあるかもしれない。しかし、日本製鉄が75%しか買えないのであれば、55ドルの価値はない。また、日本製鉄が51%未満しか受け入れなければ、その価値はもっともっと低くなる。しかし、USスチールに55ドル以下を受け入れるよう求めることは、既存の契約に違反することになる。

両社とトランプ政権が6月15日までに合意しない限り、バイデン政権の裁定により合併は解消される。法的には延長は可能だが、それには3者全員の合意が必要だ。つまり、当事者間の合意が近づかない限り、延長の可能性は極めて低い。

日本製鉄にとっては険しい道のりになりそうだ。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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