【産業天気図・パルプ/紙】原油高に代わり古紙高などがリスクに浮上。後半は需給悪化懸念

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首位・王子製紙<3861.東証>による北越製紙<3865.東証>への敵対的TOB騒ぎ(結局失敗)でクローズアップされた製紙業界だが、07年度は国内大型再編は一服だろう。産業界の中で比較的早く合従連衡が進んだ製紙分野では、もはや適当な組み合わせが見当たらなくなってしまった。
 王子はTOB失敗の結果、北越や日本製紙グループ本社<3893.東証>、大王製紙<3880.東証>など“反王子連合”の結集を招き、ヤブヘビとなった。今後、王子の“唯一”の親密先・中越パルプ工業<3877.東証>との合併話が破談となった三菱製紙<3864.東証>を「もう一度取り込む可能性も」(業界筋)との観測が一部にあるが、TOB阻止へ北越の増資を引き受け、同社を持ち分会社にした三菱商事<8058.東証>との絡みから、『王子=三菱』の組み合わせには現状、否定的な見方が強い。TOBを機に有力プレーヤーのほとんどが「反王子」ないし「非王子」のスタンスをはっきりさせたため、こと国内に関しては王子にめぼしい統合相手は見当たらない。王子側は「アジアなど海外企業との提携やM&Aを模索する」(幹部)と話すが、まずは懸案の中国進出計画の着実な実行が最優先だろう。
 一方、王子の“敵失”に乗じ、業界内でのポジションを飛躍的に改善したのが、2位の日本製紙グループだ。北越との提携は(北越側は自主独立を謳うものの)将来的な拡大深化が視野にあり、また、王子に比べて非常に劣勢な板紙・段ボール事業も段ボール首位レンゴー<3941.東証>との資本提携で活路が見えてきた。レンゴーとの提携効果は両社計で当初、年18億円と拍子抜けするほど小規模だが、こちらの提携も将来的には経営戦略の領域にまで踏み込む構え。大王は創業一族の色彩が濃く、他社との合併等は考えにくいが、「反王子」で北越と一致し、資本・技術提携を結んだ。仮に日本、北越、レンゴーが統合して「大日本製紙」が誕生すれば、売上高にして1.7兆円と、王子の1.2兆円を大きくしのぐ洋紙・板紙・段ボール首位のトップ企業となる。ただし北越、レンゴーとも個性の強さは大王に引けを取らない。「大日本」実現には、非常に微妙な舵取りが求められよう。
 以上は中長期の展望だが、足元の業績動向を見ると、07年度は原燃料高に苦戦した06年度に比べ回復を遂げる、とは言い難い。その理由の一つは、近年の業績悪化の主因である原燃料高が今後も続く懸念だ。06年度は上期までの原油高と、その一服後に起きた下期の原料チップや古紙の高騰により、王子、日本の2大メーカーは2年連続の減益を余儀なくされる。続く07年度は前年の製品値上げ努力が通期寄与すること等で利益好転を見込むが、一方でチップ・古紙の続騰も予想され、好転幅は限定的か。場合によっては、減益が続くリスクも否定できない。
 また、洋紙市況の悪化も懸念材料。今年後半、大王と日本が最新鋭の塗工紙設備を稼働させるからだ。両社は既存設備の停機や輸出への振り向けなどで国内市況へのインパクトを極力抑える意向だが、もし需給が緩んで市況が軟化すれば、上述のコストアップ懸念と相まって、利益的には相当苦戦しかねない。さらに言えば、翌08年度には、追い打ちをかけるかのように、北越と王子も大型塗工紙設備を稼働させる。
 内需頼みの製紙業界はこれまで、好況時に各社が競って増産投資を行い、それが供給過剰を招いて消耗戦を演じる、という悪循環を繰り返してきた。今回は、それを回避して“適正利潤”を確保し、かつ新たな成長を求めて輸出産業へと脱皮できるのか−−。大げさに言えば、製紙セクターは歴史的な変革局面を迎えている。
【内田史信記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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