「アベノミクス第2ステージ」成功の条件とは 実質賃金は財政出動だけでは増えない

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生産性向上は、言うは易し行うは難しである。職場や実地での自らの努力なくして、生産性向上はない。これまで、財政出動に頼めば、金融緩和に頼めば、景気がよくなるかのような「他力依存」が横行していた。景気回復の実感が得られないのは政策当局者の責任とする向きもあった。しかし、これからのステージは「他力依存」では打開できない。

もはや、需要不足との認識の虜となっていては、経済動向の核心を見失う。今や、需要不足の解消に重きを置いた政策を講じても、事態は打開できない。むしろ、供給側の問題の方が深刻である。

「アベノミクス第2ステージ」と銘打つ背景には、こうした認識がある。それがより顕著に示されたのが、(永田町・霞が関界隈で安保関連法案をめぐり騒然とする)9月17日に装いを新たに発足した経済産業省の産業構造審議会新産業構造部会である。筆者も同部会の一委員として、議論に加わることとなった。

諮問会議の常任である経産・総務大臣の人事に注目

もちろん、議論はこれからである。同部会の第1回会合では、「『日本再興戦略』改訂2015」を踏まえ、IoT(Internet of Things、モノのインターネット化)、人工知能、ロボット、省エネへの「生産性革命投資」をどう促し、その環境をどう整え、生産性向上から賃上げへとつなげて、成長の制約要因を供給側からどう打破するか。これらを今後俎上にのせることが示された。

同部会は、経済産業大臣の諮問機関だが、ICT(情報通信技術)に関連して総務省、教育や科学技術振興に関して文部科学省とも連携しながら、生産性革命投資を促す具体策をどう示すか。これが、「アベノミクス第2ステージ」の成否を分ける1つのカギとなる。

今後の議論の行方を占う意味において、直近で試金石となりそうなのは、10月上旬に予定されている内閣改造だろう。経済産業大臣、総務大臣、文部科学大臣の人事が注目される。特に、経済産業大臣と総務大臣は、経済財政諮問会議の常任メンバーである。内閣改造後の各大臣の発言や決断力が、予算編成や経済政策の行方を左右する。
 

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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