しかし、第2次安倍内閣以降の日本経済においては、人手不足が進行していった。人手不足は、大企業のみならず中小企業も含めて、日増しに深化しており、完全失業率も自然失業率の水準と見込まれる3.5%を割るほどまで低下している。
これは、2014年4月の消費税増税後も続いている。他方で、実質賃金が伸び悩んでいる。安倍首相自ら経済界や労働界に働きかけて賃上げを要請するという稀有な試みもなされたが、中小企業従業者への浸透が不十分とされる。
財政出動による需要喚起では、実質賃金は上がらない
確かに、インフレ目標を2%と掲げて物価上昇圧力をかけながら、物価上昇率以上に賃金が上昇しなければ、実質賃金は上がらない。とはいえ、実質賃金が十分に上がらなければ、家計消費も伸び悩む。政府からの賃上げの働きかけだけでは、実質賃金が十分に上がらないとすれば、何が必要か。
では、財政出動して需要を喚起すれば、実質賃金は上がるのだろうか。公共事業を発注するにしても、人手不足の制約に直面する。商品券などを通じて家計におカネを配っても、家計所費を刺激する効果は一時的に終わる。
需要が増えれば、売上げが増えて、その分だけ賃上げできる、と単純にはいかない現実に直面しているのである。つまるところ、労働生産性が向上しなければ、賃金は上げられないということである。同じ仕事をするにしても、より短時間で成し遂げられれば、それだけ時給は上げられる。同じ時間をかけて仕事をするにしても、より大きく付加価値が上げられれば、賃金は上げられる。これこそが、労働生産性向上そのものである。
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