JR貨物列車に同乗取材「定時運行の敵」雪との戦い 青森―札幌間464kmを運転士が「たすきリレー」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「3097の運転士さん聞こえますか」と、無線機から声が聞こえてきた。声の主はJR北海道の輸送指令だ。「姫川で交換の特急列車は輸送障害のため4〜5分遅れています」。

姫川信号場では対向列車との行き違いのために止まっていたのだ。前方からやってきた特急列車をやり過ごして姫川信号場を発車すると、次の森駅は「4分延」で通過した。せっかく定時で通過できるかと思ったが、列車の運行とは前後の列車との関係も重要になってくる。運転士の腕だけでなんとかなる世界ではなかった。

熊と衝突したらどうする?

森駅を過ぎてしばらく走ると列車はスピードを落とした。そこには2024年11月に貨物列車が脱線事故を起こした踏切があった。脱線の原因については国の運輸安全委員会が調査中だが、レールが腐食して破断したことが原因の1つになった可能性があるとされる。現場は海に近いため海風の影響によって塩分がレールに付着しやすい。

また、現場近くには漁港があり、漁業関係者が採れたての鮮魚をトラックに積んで踏切をわたった際に積荷から海水がこぼれたかもしれない。しかも冬場はレールが雪に埋もれ、点検作業は困難を極める。冬の北海道で鉄路を維持することがどれだけの苦労を伴うか、その実態を目の当たりにした。

国縫駅(山越郡長万部町)を「4分45秒延」で通過したころから線路沿いに大規模な工事風景が広がった。北海道新幹線の工事である。現在はトンネル工事の一部が難航しているが、こちらは順調。新幹線は開業するが在来線はどうなるか。将来の長万部は様変わりしそうだ。

小幌駅
秘境駅で名高い小幌駅を通過(記者撮影)

秘境駅で名高い小幌駅(虻田郡豊浦町)を通過し、トンネルを抜けてしばらく走ったあたりで、長谷川運転士は2年ほど前に熊と衝突したという。「シベリアンハスキーよりも大きな真っ黒な動物が飛び出してきて列車に衝突しました。停止してよく見たら熊でした」。通常は列車から降りて運行に支障がないか安全確認をするが、熊の場合はもし生きていると危険なので列車内で安全確認をして、次の駅に着いてから降りて安全確認をしたという。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事