JR貨物列車に同乗取材「定時運行の敵」雪との戦い 青森―札幌間464kmを運転士が「たすきリレー」
途中で、長谷川運転士が窓を開け、窓から顔を出している場面が何度かあった。何をしているのか尋ねると、カーブ区間などで長大編成の後部が見やすい場所では、窓を開けて後部を確認しているのだという。運転士が窓を開けるのは眠気覚ましに冷たい風を入れるためという話を聞いたことがあるが、どうやら“都市伝説”だったようだ。
当然のことながら、冬の貨物列車の運転は雪との戦いでもある。吹雪になると信号が見えなくなる。信号を確認すべき位置で信号の色や形が確認できない場合は「現示不明」と声に出し、いつでも止まれるよう速度を落とす。「つねに最悪の事態を想定しています。信号が赤になっているかもしれないからです」。

走行中に巻き上げた雪が車輪とブレーキパッドの間に入り込むためにブレーキが効かないこともある。そのときはブレーキを軽くかけて摩擦熱で付着した雪を溶かすなどの方法がある。冬季に列車を走らせる運転士はさまざまなテクニックが要求されるのだ。雪質にも違いがあり、水分を多く含む雪は重たく、走行中に抵抗を感じるという。逆にさらさらとした雪は抵抗がない。雪質によってもブレーキの効きは変わってくる。運転士は雪質も考慮しながら運転する。
遅延回復は「腕」だけでは難しい
とはいえ気苦労ばかりではない。添乗していた吉田宗平・五稜郭機関区副区長は運転中にこんな経験をした。「よく晴れた朝の一番列車を運転していたら、レールの上に前夜に降った雪が10cm程度積もっていた。レールが見えないうえに、さらさらした雪なので走行中の抵抗も感じない。周囲はダイヤモンドダストのように雪がキラキラと舞っている。列車を走らせているというよりは宙を舞っているような不思議な感覚でした」。
姫川信号場(茅部郡森町)に8時52分に到着した。「5分45秒延」と長谷川運転士が声を出した。予定より5分45秒遅れているという意味だ。出発時は8分遅れだったのでここまでで2分15秒回復した計算になる。姫川信号場は8時56分に発車予定なので、予定どおり発車できるかと思ったら甘かった。
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