JR貨物列車に同乗取材「定時運行の敵」雪との戦い 青森―札幌間464kmを運転士が「たすきリレー」

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周囲に雪はほとんどない。白老駅(白老郡白老町)から沼ノ端駅(苫小牧市)の間は国内最長ともいわれる全長28kmの直線区間があり、列車は時速90〜100kmで快走する。

JR貨物 瀬野尾運転士
東室蘭から札幌貨物ターミナルまで運転する瀬野尾行俊運転士(記者撮影)
【写真】大雪の中、DF200形が牽引する貨物列車との迫力のすれ違いシーンを運転台から見る

機関車は函館から東室蘭まで乗ってきたのと同じDF200形だが、気のせいか運転室に響くエンジン音が微妙に違う。同乗する北海道支社総務部総務グループの高坂秀和グループリーダーに尋ねてみたら、函館から乗ってきたDF200形のディーゼルエンジンはドイツ・MTU社製、今乗っているDF200形のディーゼルエンジンはコマツ製とのことだった。

沼ノ端から千歳線に入ると、行き交う列車の数がぐんと増えた。千歳線は新千歳空港のアクセス列車「快速エアポート」が10分に1本の割合で走っている。雪が降ることもなく、首都圏の路線を走っているような錯覚を感じた。

視界を阻む猛烈な吹雪

しかし、エスコンフィールドの最寄り駅である北広島駅(北広島市)を過ぎたあたりから雪が猛烈に降り始めた。遠くからでは信号の色も確認できない。「現示不明」と瀬野尾運転士が声を出した。いつでも止まれるよう速度を落としてゆっくりと運転する。

札幌貨物ターミナルには9分45秒遅れで到着した。「サッポロビール園駅(恵庭市)までは定時で運行していたのですが」と瀬野尾運転士。青森から札幌までの464kmの道のりのうち、途中で何度も遅れながら、運転士の努力でその都度ダイヤを回復し、451kmの時点では定時どおりの運行だった。しかし、残りあと13kmという最後の最後になって、吹雪が定時到着を妨げた。

DF200形 給油 札幌貨物ターミナル
札幌貨物ターミナル駅でDF200形に給油する様子(記者撮影)
【写真で振り返る】早朝の函館を出発して札幌までの行程をもう一度写真で見る

長距離貨物列車の運行は“駅伝”のようだ。運転士たちがリレーしながら運転しているからだけではない。駅伝に給水などのサポート役がいるように、走り終えた機関車に給油をしたり、貨車を付け替えたり。雪が降り続く中、多くのスタッフが黙々と作業を続けていた。「貨物列車の運転席には1人しかいないが、実はチームワークで運転しているのが運転の醍醐味」という長谷川運転士の言葉を思い出した。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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