熊本の「交通系IC全部廃止」は東京でも起こるのか 「きょうからSuica、使えないモン!」な事態に
一方で、新しいシステムの導入費用は6.7億円。タッチ決済の対応機器は交通系ICのそれより導入費用・更新費用ともに安く、国交省が定めた「機能の明確な向上」(新しい決済手段の導入)という補助の条件を満たし、1/3の国庫補助が適用される。そのため、鉄道・バス5社と県・市の負担額を合わせた導入費用負担は、約4.4億円にとどまる。
交通系ICを更新する場合に比べ、約7.7億円も少ない費用で済む計算だ。これでは、タッチ決済への切り替えは致し方ないと言える。
さらに熊本県の鉄道・バス5社は「年間収入58億円、赤字36億円」(2023年度)ということもあり、交通系ICにかわってタッチ決済が導入されることとなったのだ。
これまで政府・国土交通省は「キャッシュレス決済の比率4割」を掲げ、鉄道・バス会社や自治体を相手には、交通系ICの導入を推し進めてきた。7年~10年と言われる「交通系IC・機器更新の壁」が全国各地で迫る中、政府・国土交通省は「導入には補助、その後は知らぬ振り」という方針を見直す時が来ていないだろうか?
なお、一連の問題に対応してきた熊本市・大西一史市長も、「今後とも同様の理由(更新費用の問題)で、交通系ICの存続を断念する自治体が出るのでは?」「(費用面で)経営を圧迫するようなら、何のための決済システムなのか」と、愚痴のようにこぼしている(2024年5月28日・定例会見より)。
「更新費用問題」だけでないモン?熊本だけでない「地域のカード問題」
交通系IC・全撤退の理由は、コストだけではない。地域独自の「くまモンのIC CARD」の存在と、「インバウンド、海外からの出張客対応」といった問題もあった。

無料会員登録はこちら
ログインはこちら