熊本の「交通系IC全部廃止」は東京でも起こるのか 「きょうからSuica、使えないモン!」な事態に

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両者の導入を天秤にかけて検討する地域でも、インバウンド・海外からの出張客の多さや、予算の都合でタッチ決済を導入する地域が増えてくるだろう。ただし、「JRとの接続を考えて交通系IC導入」(長野県・ぐるっとまつもとバス。2026年春から導入予定)、「両方対応」(沖縄県・ゆいレールなど※3月28日から)、「利益が増える訳ではないからキャッシュレス自体導入予定なし」など、現状での対応はさまざまだ。

東京では「まだまだSuicaが必要」ただし今後は?

東京をはじめとする都心部は、まだ交通系ICを必要とするだろう。先に述べた通り処理速度の問題もあり、Suicaなどで通過する利用者が多くないと、とてもラッシュを捌けない。

しかし、ICカードタイプの交通系ICはどうだろうか。一時期世間を賑わせた「長期のカード販売停止」の原因となった「半導体不足問題」が立ちはだかる。

FeliCa規格の交通系ICの普及は、日本国内と香港「八達通」などにとどまり、多量生産による生産コストの押し下げは期待できない。かつ、交通系IC向け半導体の製造からは富士通・東芝などが撤退済み。パナソニックも半導体事業を台湾大手「新唐科技」(ヌヴォトンテクノロジー)に譲渡しており、「世界への普及が望み薄、製造はほぼ1社、海外企業頼み」では、ICカード発行の先行きが明るいようには見えない。電子マネーとしての規格は残っても、カード発行はアプリなどに顧客を譲り、緩やかに縮小していくかもしれない。

「ウォークスルー改札」イメージ
タッチをしない「ウォークスルー改札」(画像:JR東日本HPより)

この状況の中で、2001年から20年がかりで交通系ICの普及に努めてきたJR東日本は、中長期戦略「Beyond the Border」の中で、Suicaを「デジタルプラットフォーム」と位置付けている。諸種チケットの取得やEコマースによるショッピング、あらゆる決済手段など……Suicaは「鉄道・バスに乗車する手段」にとどまらず、カードではなくアプリがメインになってくるだろう。

また、ICカードなどにかわる「次世代の改札」候補として、スマートフォンの位置情報などを利用して、タッチせずに通過できる「ウォークスルー改札」の実現を模索しているという。スーツケースを両手いっぱいに3、4個ひいていても通過できるなら、カードやスマートフォン、タッチ決済より間違いなく便利だ。

ほか、事前に顔写真を登録してスルーする「顔認証改札」(千葉県・山万ユーカリが丘線で導入)や、Visaのタッチ決済機能をそのまま指輪型のデバイスに移植した「スマートリング」などにも期待がかかる。カードや「スマホをピッ」だけでない、乗車手段の多様化にも期待したい。

「電車・バス乗車手段の将来像」が、うっすら見えてきた。さて、Suicaなどの交通系ICやタッチ決済は、今後どう勢力を広げていくのだろうか? 

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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