
「空飛ぶクルマ」の開発で中国企業の先頭を走る億航智能(イーハン)は10月13日、航続距離を大幅に伸ばした新しいeVTOL(電動垂直離着陸機)「VT35」を公開した。固定翼を設けることで航続距離を従来モデルの6倍強に相当する200km超に伸ばし、主に都市間移動に使用することを想定している。
VT35は2人乗りの自動操縦機で、メーカー希望価格は650万元(約1370万円)だ。
現状、イーハンの主力製品はEH216-Sで、日本では一般的に「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOLとしては中国で初めての耐空証明を2年前に取得した。耐空証明は中国民用航空局(民航局)による安全性の証明であり、商用飛行の大前提。これを受けて、EH216シリーズはこれまでに数百機が販売された。
従来モデルは航続距離30kmで遊覧飛行向け
EH216-Sはヘリコプターと同様の回転翼(ローター)を複数採用する「マルチローター」型のeVTOL。構造が比較的シンプルで製造コストが低いことから、希望小売価格はVT35の4割未満にとどまる。しかし、マルチローターeVTOLはローターに浮力と推進力の双方を頼っているため、飛行効率が低く、EH216ーSの航続距離はわずか30キロメートルにとどまる。このため、現状の用途は低高度での遊覧飛行が中心だ。
このためイーハンは長年にわたり固定翼を持った長距離eVTOLの開発を進めてきた。2021年5月26日には最初のモデルとなるVT30をリリースしたが当時、同社はEH216-Sの耐空証明取得に忙しく、VT30の開発・試験は優先事項ではなかった。
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